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無精髭
第二章

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「これがな」
「もてたいか?」
「もてたいさ、それはな」
 悠一は智和に対して即答で答えた。
「まだ独身だしな」
「可愛い娘を取っ替え引っ替え。認知で揉めるか」
「最後はいいさ」
 認知の話はというのだ。
「というかそんな馬鹿なことはしないさ」
「もててもか」
「ああ、しないさ」
 それはというのだ。
「そんなことはな」
「ちゃんとだな」
「というか認知だけじゃなくて病気とかな」
 その心配もあるからだというのだ。
「そういうのは気をつけてるさ」
「ああ、そうしないとな」
「まずいだろ」
「実際にな」
「そんなことはわかってるさ」
 悠一にしてもというのだ。
「しっかりとな」
「それは何よりだ」
「もててもな」
「じゃあもてたいならな」
 是非にとだ、智和はジョッキのビールを飲みつつ悠一に言った。
「生やせばいいだろ」
「そうか」
「御前がそうなりたいならな」
「あの時は面倒臭くて生やしてたがな」 
 髭、それをだ。
「今はな」
「違うか」
「何か生やしているとな」
 悠一は焼酎、ロックを飲んでいる。それを飲みつつこう言うのだ。
「不潔な感じしないか?」
「風呂には毎日入ってるだろ」
「これでも客商売だからな」
 ダンスホールのそれだというのだ。
「だからな」
「清潔にしないとな」
「不潔なのはアウトだ」
 それこそというのだ。
「だから毎日入ってるさ」
「じゃあいいだろ」
「けれど清潔なのは印象だ」
 それからだというのだ。
「それでだ」
「入ってるよな」
「脂ぎってるとか髪の毛にフケとかあるとかな」
 そうしたものはというのだ。
「もう論外だよ」
「そういうことだな」
「ああ、だから風呂はな」 
 それはだった。
「毎日一回は絶対に入ってるさ」
「そして清潔にしてるんだな」
「そうだよ」
 まさにというのだ。
「俺だってな」
「だから無精髭もか」
「あの時のことは反省してるんだよ」 
 面倒臭いので髭を剃らなかった時をというのだ。
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