第四章
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「そなたは仕事は続けているな」
「この通りです」
「そうだな、噂ではな」
「噂?」
「そなたが彼の才能に限界を感じて仕事を止めたとあるが」
「見ての通りです」
ヴェロッキオは少し苦笑いになって答えた。
「続けてますよ」
「そうだな」
「それはまた変な噂ですね」
「確かにな」
「あいつはあいつ、そしてです」
「そなたはそなたか」
「そうです、あいつは確かに凄いですが」
だがそれでもというのだ。
「私は私で自分の腕に自信がありますから」
「だからか」
「仕事を止めたりはしませんよ」
「そして今も造っていくか」
「そうします、では仕事が完成しましたら」
「手紙を送ってくれるか」
「その時にまたいらして下さい」
「わかった、ではな」
メディチ家の者も応えた、そしてだった。
ヴェロッキオは仕事を続けた、彫刻は少しずつ完成に近付いていっていた。彼は彼として仕事を続けていた。
ヴェロッキオがダヴィンチの才能を見て師としての自信の才能に絶望して芸術の道を断念したことは伝説である、だがキリストの洗礼という絵に当時彼の弟子だったダヴィンチの手も入っていることは事実だ。彼の若き日の作品であり今も残っている。そこに彼の天才が表れていると言われている、万能の天才と言われた彼のそれがだ。
しかしダヴィンチは己の名声よりもだ、ただ芸術と学問に勤しんでいた。その彼に弟子のサライはいぶかしで言うのだった。
「よくそこまで起きられますね」
「わしはな」
長い髭の知的な顔で美男子の弟子に応える、真夜中だが今も机に座り何かと学問に勤しんでいるのだ。
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