第三章
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「神を信じず人を人と思わない」
「極めて悪徳の強いですね」
「そして痩せた美男子ですか」
外見のことも話した。
「やはり」
「そう思われますね」
「違いますか」
「それは若い頃でして」
「侯爵様の」
「確かにそうした方でした」
若い頃はというのだ。
「実際に、しかし」
「今はですか」
「はい、詳しいことはです」
「侯爵様ご本人にですね」
「お会いになられれば」
その時にというのだ。
「おわかりになります」
「それでは」
「はい、こちらです」
医師はここまで話してだ、そしてだった。
ボルトワとアルトネを侯爵のところに案内した、侯爵は丁度病院の中庭にいると言われたのでそこに行くとだった。
ベンチに太っただらしない身なりの老人がいた、ボルトワはその老人を見てまさかと思い医師に対して問うた。
「まさか」
「はい、あの方がです」
「侯爵様ですか」
「そうです、サド侯爵です」
まさにその彼だというのだ。
「そうなのです」
「何か」
その老人を見てだ、ボルトワは驚きを隠せない顔で言った。
「あの方は」
「別人とですね」
「そうとしかです」
まさにというのだ。
「思えないです」
「そうですね、しかし」
「それでもですか」
「あの方がサド侯爵閣下です」
紛れもなくというのだ。
「お二人が今から会われる」
「そうですか」
「お話をされますか」
あらためてだ、医師は二人に問うた。
「これより」
「その為に参りましたので」
アルトネが答えた。
「それでは」
「はい、これより」
「今からお会いします」
「では」
医師はアルトネの言葉を受けてだ、そしてだ。
二人を侯爵、ベンチに俯いて座っている彼のところに案内した。そのうえで侯爵に対して声をかけたのだった。
「侯爵、宜しいでしょうか」
「何かね」
皺がれていてだ、何の覇気もない声だった。首を回す動作にもそれがない。
「一体」
「はい、侯爵に会われたい方々がおられまして」
「そちらの方々か」
侯爵と呼ばれた老人はアルトネとボルトワを見て応えた。
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