第二章
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「我々神に仕える僕達に会いたいともです」
「言われていますか」
「会われたいですか」
アルトネはボルトワに問うた。
「そうされたいですか」
「侯爵殿に」
「はい、そうされたいですか」
「そうですね」
少し考えてからだ、ボルトワは答えた。
「そう言われますと」
「お会いしたいですか」
「はい」
師に素直に答えた。
「そう思います」
「そうですか、では私から手配をしましょう」
「侯爵殿に会われる」
「あの方がおられる病院まで赴き」
「そのうえで。二人で参りましょう」
「わかりました、果たして実際はどうした方か」
聞く限りでは背徳を極めたこのうえなく不道徳な人物だ、革命前のモラルも革命後のモラルも全く通じないまでの。
しかしボルトワは人は聞くのと実際に会うのとでは全く違う、若いが聡明な彼はそのことを知っている。師もこれは同じだ。
それでだ、こう答えたのだ。
「お会いして確かめさせてもらいます」
「それでは」
「はい、お会いしましょう」
侯爵にだ、こうアルトネに答えた。そしてだった。
アルトネの方で手配をして侯爵が今現在いる精神病院に慰問として赴くことになった。この手配を全て終えてだ。
アルトネはボルトワにあらためて言った。
「ではシャラントンに赴きましょう」
「そこに侯爵がおられるのですね」
「そちらの精神病院に」
「精神病院、では」
「実はお気は確かとのことですが」
「背徳の行いのあまり」
「そちらに入れられています」
精神異常者と断定されてというのだ。
「そうなっています」
「左様ですか」
「そしてです」
「その病院にですね」
「参りましょう」
「わかりました」
ボルトワはアルトネの言葉に頷いた、こうして二人はリヨンからシャラントンに赴いた。そしてそこの精神病院に入るとだ。
二人はすぐにだ、侯爵のことを病院の医師に尋ねたが医師は二人に難しい顔で述べた。
「よく来られましたが」
「何か」
「お二方は今のあの方をご存知ないですね」
こう言うのだった。
「そうですね」
「そう言われますと」
ボルトワが答えた。
「その通りです」
「そうですね、あの方はかなりお歳を召されて」
それでというのだ。
「ここにきてです」
「変わられたのですか」
「幾分、いえかなり」
そうなったとだ、ボルトワに答えた。
「おそらく貴方が思われる様な」
「侯爵様ではですか」
「なくなっています」
そうだというのだ。
「そのことはご了承下さい」
「といいますと」
「侯爵様はどういった方だと思われますか」
医師はボルトワに問い返した。
「一体」
「はい、背徳と乱倫を極め」
ボルトワは彼が思う侯爵の姿をありのままに話して答えた。
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