第28話<憲兵と陸軍>
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「でも司令も良い人っぽい」
私は思わず苦笑した。お前の、その最後の『ぽい』が全て台無しにするんだよ。
日向が思い出したように報告する。
「まだ敵機は遠くを周回しているようです」
私も遠くの空を横切っている敵機らしき影を見ながら応えた。
「島風や比叡を警戒しているのかな」
陸軍も敵の攻撃を警戒しながら回収作業を進めている。憲兵は同時に警報解除になって出てきた見物人が不用意に近づかないように注意していた。
「恐らく敵の残党も何処かから、この作業を見ていることだろう」
私は日向に言った。
「戦車を操縦していた深海棲艦は逃げたようだな」
「そうですね。潜水艇とか上陸部隊(船)がどこかに居たのでしょう」
彼女は応える。
その言葉に私はハッとした。
「まて……上陸部隊? そういえば敵の空母が来たのは後からだよな」
「はい」
「そもそも深海棲艦は海上が主戦場だ。だが今回は戦車を持って来たよな」
「そうですが」
私は日向の顔を見ながら聞く。
「連中の基本装備は変な話だが、我々帝国海軍とよく似ている。逆に言えば彼らも艦船や航空機は持っていても地上攻撃部隊は居ないはずだ」
さすがに彼女も不思議に思い始めたようだ。
「そうですね。私の経験からも敵は地上部隊は持っていないはずです。それに今回の戦車のデザイン形態は深海側とは違う印象です」
思案しながら的確に応える日向。さすが戦艦は分析力がある。
「やはり我々と深海側以外の第三者……別の勢力が加担している可能性が否定出来ないな」
「はい」
そうこうしているうちに大淀さんたちは、かなり近づいてきた。
私はトーンを下げて日向に言う。
「私たちが実は深海棲艦を生け捕りにしてると知ったら陸軍も大騒ぎだな」
「はい、だから陸軍に黙っていて正解でしょう」
察しが良いな。
そうだ、念のために……
「おい、夕立」
私は声をかけた。
「ぽい?」
島風と話をしていた夕立は、こちらを振り返った。
「寛代と、あの捕虜の様子を見てきてくれ」
「了解っぽい」
軽く敬礼をすると夕立は路地へと戻って行った。
私は改めて日向に言った。
「今のところ岸壁付近の制空権は問題ないな」
「そうですね」
「大変っぽいぃ!」
いきなり路地から夕立が叫んだ。
「居ないっぽい!」
「また……報告に『ぽい』は、ないだろう? 事実を報告しろって」
相変わらず焦点がズレてるな。
「だから、いない、いない!」
さすがに夕立も慌てふためいて、こっちに戻ってきた。
「分かったから、ちょっと落ち着け」
私は夕立をなだめる。
「おい、大きい声を出すな」
私はわざと強い声で制した。夕立は硬直
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