第六章
[8]前話
「そのことが」
「そういうことだな、しかしな」
「しかし?」
「少尉は随分食ってるな」
キャリーはボルトがステーキを四枚目まで食べようとしていることに少し苦笑いになって指摘した。
「今日も」
「腹一杯食って精一杯動く主義なんで」
「だからか」
「はい、今日も食ってます」
笑いながらその四枚目のステーキを食べている、勿論他の料理も食べている。
「いつも」
「まあ俺も食ってるな」
「皆盛大に食ってますね」
「酒も飲んでるしな」
「食料はいつも有り余ってますね」
「そこまであるな」
「燃料や弾薬も」
そちらもというのだ。
「補給はちゃんとしてますね」
「俺達の中隊もバズーカがふんだんにあってな」
「それでエレファントとも戦えましたし」
「補給も考えてるんだな」
ここでだ、考える顔で言ったキャリーだった。
「将軍は」
「そういうことですね」
「そこまでな、食料も燃料も弾薬も」
「いつも大量にある」
「そのうえで大胆不敵に、か」
「そう考えていきますと」
ボルトはステーキを食べつつだ、キャリーに言った。勿論キャリーもステーキを食べている。彼は二枚目だ。
「将軍は意外と、いえ実は」
「しっかりとな」
「弁えている人ですね」
「細かいところまで考えている」
「精細な人かも知れないですね」
「ははは、繊細なイメージとは程遠いがな」
何処からどう見てもとだ、キャリーはパットンの評判から笑って述べた。
「あの人の場合は」
「そうですけれどね」
「実は、か」
「無茶な命令も出さず無用な損害、犠牲も出していないですし」
実はパットンが率いる部隊は損害が少ない。勇敢さで知られる彼が率いていてもだ。
「そこもわかっている」
「しっかりした人でな」
「繊細なところも実はある」
「そうした人なのかもな」
実際にパットンに部隊のところまで来られて笑顔で声をかけられてだ、二人は思ったのだった。パットンは実は、とだ。そのうえで彼の中隊は終戦まで戦ったが殆ど損害は出さなかった。
ジョージ=パットンは第二次世界大戦においてのアメリカ軍の猛将として知られている、だがその実はだ。
彼の率いた軍勢は損害は少なかった、常に攻撃を繰り返していたパットンが率いていたがだ。しかも補給は常に整っていた。そうしたことを見るとパットンという人間の実像が見えるであろうか。名前からして如何にと言うイメージが湧き写真の軍服姿と顔を見ればそれが定着しその生い立ちを見れば完全に揺るがないものになってしまうがだ。意外な一面に満ちたその意味からでも面白い人物であるということがだ。
繊細な猛将 完
2016・10・16
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