第一章
[2]次話
赤舌
津軽の古い話だ、この時津軽は旱魃に苦しんでいた。とかく水がなく飲む水にも田の水にも困っていた。だが。
川の上流にある村の一つがだ、ここで彼等だけしか考えないことをした。
「こうなってはだ」
「仕方がないな」
「さもないとわし等が生きていられない」
「川の水をせき止めてだ」
「わし等だけが使おう」
「他の村のことなぞもう構っていられない」
「水が必要だ」
水がないと生きていられない、だからだというのだ。
彼等は川の水をせき止めて自分達が飲み田に入れた、そうして彼等は暑かったが。
これで困るのは下流の村だ、この村の村人達は当然ながら怒った。
「勝手なことをするな」
「自分達さえよかったらいいのか」
「わし等はどうなる」
「死ねというのか」
「ふざけるな」
「そんなことをするな」
当然ながら怒る、それで上流の水門まで行って水門を開けて水を引き込もうとするが上流の村人達も必死だった。
昼も夜も水門を守る、そうして言うのだった。
「水はやるか」
「わし等も生きないとならん」
「そっちはそっちで何とかしろ」
「わかったら帰れ」
鍬や鎌、鉞等を手にして言う。しかし。
下流の村人達も死にたくない、水が必要だ。それでだ。
彼等も鍬や鎌を手に取って水門まで行ってだ、彼等に言うのだった。
「どうにか出来んから言っているのだ」
「水門を開けろ」
「わし等全員死ねというのか」
「それならこっちにも考えがあるぞ」
「容赦せんぞ」
「何ならやるか」
殺し合いをしてでもというのだ、だが。
そんな騒ぎを聞いた代官が来てだ、彼等の間に入って言った。
「待て、喧嘩両成敗だぞ」
「しかしです」
「わし等も生きないといけないです」
「わし等に死ねっていうんですか」
どちらも代官に言う。
「水がないと」
「どうにもならんです」
「わかっておる、しかし殺し合いなぞして何になる」
代官はこのことを言うのだった。
「矛を収めてじゃ」
「そしてですか」
「そのうえで」
「そうじゃ、この場は去るのじゃ」
一先ず、というのだ。
「よいな、わし等が何とかするからな」
「左様ですか」
「そうして頂けますか」
「うむ」
そうだというのだ。
「だからじゃ」
「はい、お代官様がそう言われるのなら」
「わし等もです」
「帰ります」
「そうします」
「そうせよ、若し何かあれば両方共成敗せねばならん」
代官も不本意だ、両方の村人達にこのことも告げた。
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