第四章
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「いじめ役の娘の中でも一番陰湿ですね」
「勘違いから主人公を憎んで周りを煽ってさえして真っ先にいじめてるからね」
「主犯の娘よりも酷いですよね」
「むしろね」
「そんな娘ですから」
「だからこそ余計にね」
秋本は七瀬に発破をかけることすらした。
「頑張らないとね」
「全力で演じていじめないとですか」
「駄目だよ、今回の演技が評価されたら」
それこそというのだ。
「また道が開けるから」
「だから余計にですか」
「頑張ってね」
「はい・・・・・・」
七瀬は秋本に返事をした、だがその声はいつもよりも元気がなかった。しかし彼女も仕事であることはわかっていてだ。
真剣に演じた、絵里依をドラマの中でだ。
実際に真っ先に酷くいじめた、それは主犯格すら超えていた。
収録の後は普段通りだ、だが着替えの時に絵里依の身体を見てだ。七瀬も他のいじめ役の面々もだ、絵里依に必死に謝った。
「御免なさい!」
「痛いわよね」
「あの、さっきはやり過ぎて」
「酷いこと言って」
その打ち身や痣を見て謝るのだった。
「本当に」
「御免ね、本当に御免ね」
「いいですよ、仕事ですから」
しかしだった、絵里依は割り切っていて明るく言うだけだった。
「私だっていじめ役やってましたし」
「そういえば」
「確かに絵里依ちゃん前はそうだったけれど」
「それでもね」
「こんなに酷くなかったじゃない」
「このドラマいじめが酷過ぎるから」
ドラマの中でもというのだ。
「絵里依ちゃん傷も耐えないし」
「お顔は何もなってないわよね」
七瀬達いじめ役の面々は絵里依の顔を見た、言うまでもなくアイドルにとって顔は最大の商売道具である。
「お顔は絶対にってね」
「注意してるけれど」
「当たったりしてないわよね」
「はい、大丈夫ですよ」
絵里依は七瀬達ににこりと笑って言った。
「気にしないで下さい」
「だといいけれど」
「本当に御免ね」
「酷いことして」
また謝る七瀬達だった、絵里依は悪気がなくとも苦しい心情だった。それで彼女達だけになっても言うのだった。
「こんなのね」
「もう嫌よ」
「細書は軽く引き受けたけれど」
「ただのお芝居だって」
「人殴ったり蹴ったりとか」
「いじめられた経験あるのよ、私」
一人が泣きながら言った。
「それよりずっと酷いことするなんて」
「嫌よね」
「嫌よ、こんなの」
こう七瀬に言う、互いに席を囲んでいるが顔は俯いている。誰もが泣きそうな顔だ。
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