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成敗
第三章

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 笑顔の通り素も明るくよく気がつく性格で七瀬とも打ち解けて収録の間によく話をした、この時絵里依は七瀬に笑ってこう言うのだった。
「収録の時ですけれど」
「うん、お仕事のね」
「いじめの場面もう徹底的にやって下さいね」
「えっ!?」
「ですからもう徹底的にですよ」
 こう笑顔で言うのだった。
「やっていいですから」
「いじめを?」
「はい、だっていじめのドラマじゃないですか」
 絵里依は自分の言葉に聞き返した七瀬ににこりと笑って答えた。
「ですから」
「いじめの時は」
「もう本当に」
「けれど」
 絵里依の言葉を受けてだ、七瀬は戸惑って言葉を返した。
「このドラマいじめの場面は」
「酷いですよね」
「言葉の暴力や意地悪だけじゃなくて」
 さらにというのだ。
「後ろから蹴ったり水かけたりトイレでリンチしたり」
「原作の漫画でもありますよね」
「そんなのばかりよ、教科書や机に落書きするし」
「ですからそうしたいじめをです」
「徹底的にやっていいの?」
「他の人にもお話させてもらってますから」 
 七瀬以外のいじめ役の面々にもというのだ。
「どうぞです」
「いいの?本当に」
「さもないといいドラマにならないですよ」
「それはそうだけれど」
「ですからお願いしますね」
「徹底的になの」
「思い切りです」
 絵里依は笑って言う、しかしだった。
 七瀬は彼女に言われた後で秋本に彼女とのやり取りのことを話した、そのうえで彼にこう言ったのだった。
「絵里依ちゃんそんなこと言ってますけれど」
「その通りだよ」
「思い切りしないとですか」
「そうしたドラマだからね」 
 だからというのだ。
「そうしないと駄目だよ」
「そうですか」
「これまでいじめをテーマにしたドラマはあったけれど」
「どのドラマもですか」
「いじめ役の人達は凄い熱演だったから」
 そうした演技が多かったというのだ。
「だからね」
「私もですか」
「そう、思い切りやらないとね」
「駄目ですか」
「そうであってこそだよ」
「ドラマにならないですか」
「絵里依ちゃんわかってるね、流石だよ」
 演技力を評価されているというのだ。
「自分から言うなんて見事だね」
「じゃあ」
「七瀬ちゃんもね」
「全力で、ですか」
「彼女をいじめるんだよ、いいね」
「蹴ったり水をかけたりですか」
「お弁当にゴミを入れたりもするよね」
「私の演じる役は」
 その役のこともだ、七瀬は話した。
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