第七章
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「お外から水車の音が聞こえてくるとか」
「こうしたゴトゴトとした」
「それもないんだ」
「だって水車がないから」
そもそもそれ自体がというのだ。
「だからね」
「ないんだね」
「この音も」
「だから中に入っても」
そうしてもというのだ。
「全然面白くないの」
「そうなんだ」
「そうした感じなんだ」
「そうなの」
桐子は二人に話した、実際に寂しそうに。
「こんな風じゃないの」
「ううん、お家の中の物置?」
「あんな感じかな」
「納屋みたいな」
「そんなのみたいだね」
「ええ、同じよ」
桐子は叔父の家で見たその納屋や物置を思い出しつつ話した。
「暗くてね」
「ああした場所に入っても」
「別に面白くないし」
「こことはね」
「また違うから」
「そう、違うから」
実際にとだ、桐子は二人にまた話した。
「全然ね」
「じゃあここの方がいい?」
「水車小屋の方が」
「面白いんだ」
「そうなんだ」
「そう、私ここが好きになったら」
水車小屋の中、まさにここがというのだ。
「そうなったわ」
「そうなんだ、じゃあ今日はね」
「ここにまだいる?」
「そうしたいけれどいいかしら」
二人にあらためて尋ねた。
「今日は」
「うん、いいよ」
「好きなだけいてね」
二人はその桐子に笑顔で答えた。
「ここが気に入ったらね」
「そうしてね」
「そうさせてもらうわ」
実際にとだ、桐子も答えてだ。
三人でこの日は夕方まで水車小屋の中にいて東京や長野のことをお互いに話した、そうして楽しい時間を過ごして。
五時前に別れてだ、桐子は彼女が今いる家に帰った。二人はその彼女を見送ってからお互いに顔を見合わせて話をした。
「あの娘えらく気に入ったね」
「うん、水車も水車小屋もね」
「何でもないものなのに」
「それがね」
桐子、彼女はというのだ。
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