第二章
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「僕もうちの祖父ちゃんに言われるよ」
「昔はって?」
「もっと田んぼも畑もあって」
「テレビも白黒でトラクターも車もなくて」
「あと水車も多くて」
「水車小屋も沢山あって」
「そんなのだったってね」
昔はというのだ。
「そんな話をしているよ」
「拓哉の方もなんだ」
「そうだよ、あとね」
「あと?」
「僕の苗字は島崎だけれど」
彼の祖父が言うにはだ。
「別に島崎藤村とは関係ないらしいよ」
「あっ、そうなんだ」
「別にね」
「藤村さんのことは知ってるけれど」
まだ子供だが長野ではあまりにも有名な人物でだ。
「親戚でもないんだ」
「違うよ」
そこははっきりと言う、二人共髪の毛は短い。宗則の方が幾分小柄で太っている。だが背自体は二人共小学三年生にしては大きな方だ。
「全然つながりないんだって」
「そうだったんだ」
「そうだよ、親戚だったらよかったけれど」
地元の誇る文豪である藤村がだ、千曲川流域と諏訪で地域は違うが長野は長野ということで一緒にしているのだ。
「仕方ないね」
「そうだったんだ」
「うん、けれど」
「けれど?」
「うちのお祖父ちゃんも言ってたよ」
「昔と比べると変わったって」
「諏訪もね」
この地域もというのだ。
「田んぼも減ってね」
「畑もそうで」
「テレビは液晶、トラクターに車になって」
「水車も減ったって」
「そう言ってるよ」
彼の祖父もというのだ。
「本当にね」
「そうなのかな」
「多分そうなんじゃないの?」
実際にとだ、拓哉は宗則に言った。
「やっぱりね」
「そうなんだね」
「うん、ここもね」
「昔と今じゃ違うんだ」
「今と祖父ちゃん達が子供だった頃は」
「祖父ちゃん今七十だから」
宗則は彼の祖父の年齢から考えた。
「祖父ちゃんが子供の頃は六十年前?」
「それ位だね」
「昭和だよね」
「そうだよね」
「昭和の何時位かな」
「四十年?いや、三十年位かな」
「大昔だよね」
彼等からしてみればだ。
「それこそ」
「そうだよね」
二人にはピンとこない時代だった、六十年にもとなると。それでだった。
二人は今一つ祖父達が子供だった頃はどういった状況だったかわからなかった、もっと言えば想像も出来なかった。だが。
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