巻ノ九十一 消える風その三
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「是非な」
「そうしても宜しいですか」
「死ぬまでここにおる」
風魔は由利にこうも答えた。
「だからな」
「では」
「うむ、何時でもな」
「そうさせてもらいます」
「ここの暮らしも慣れた」
箱根の奥での世捨て人のそれもというのだ。
「暇ではあるがな」
「それでもですか」
「何とかな、そして何かをする気もない」
それもというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「後はじゃ」
「それでは」
「貴殿等のこと、ここで聞くとしよう」
幸村達のことをというのだ。
「何を果たすかな」
「それではです」
幸村もここで風魔に言った。
「是非」
「その様にな」
「では我等はこれから」
「九度山に戻られるな」
「そうします」
一旦というのだ。
「そしてまたです」
「修行に出ることもか」
「あります」
「そうか、ではこれからも」
「何かあれば」
「来られよ、わしはもうここから決して出ぬが」
それでもというのだ。
「何かあればな」
「何時でもですな」
「来られよ」
こう幸村達に告げてだ、そしてだった。
幸村主従は風魔に別れを告げて九度山に戻った、風魔は礼を言って箱根を後にする彼等を笑顔で見送った。
そのうえでだ、周りの者達に言った。
「余生、真田殿が何をされるか」
「そのことをですな」
「この箱根にいながらも」
「それでも」
「聞くとしよう」
笑みを浮かべての言葉だった。
「そのことを楽しみにしよう」
「天下は徳川殿で固まろうとしていますが」
「それでもですな」
「真田殿が何をされるのか」
「そのことを」
「あの御仁達は間違っても幕府にはつかぬ」
風魔はこのことは確信していた。
「決してな」
「そうですな、確かに」
「あの御仁達はそれはしません」
「決してです」
「それだけはありません」
「どうしても」
「そうじゃ、それはない」
絶対にという言葉だった。
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