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真田十勇士
巻ノ九十一 消える風その一

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                 巻ノ九十一  消える風
 風魔小太郎の由利への修行は続いていた、幸村も交えたそれはかなりj激しく並の者なら到底耐えられないものだった。
 しかし由利は平然としてだ、修行の後で笑顔でいた。それで風魔も言った。
「御主ならばな」
「風魔殿の術をですか」
「全て授けられる、そしてな」
 そのうえでというのだった。
「わし以上に強くなるわ」
「そう言って下さいますか」
「むしろそうなって欲しい」
 風魔はこうも言った。
「わし以上に強くなり」
「そうしてですか」
「大事を果たしてもらいたい」
「そうですか」
「真田殿を助けてな」
「だからこそですか」
「今も修行をしておるのじゃ」
 そうだというのだ。
「願うからこそな」
「左様ですか」
「そしてじゃ」
 風魔はさらに言った。
「この修行が終わってもな」
「修行はですな」
「続けてもらいたい」
 是非にというのだった。
「そのことは頼む」
「はい」
 由利も頷いて答えた。
「そのことは」
「頼むぞ、もうな」
「もう、とは」
「わしのところに来る者はおらぬだろう」
 こうも言ったのだった。
「ここまではな」
「箱根の奥までは」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「それはもうないわ」
「左様ですか」
「最後の弟子じゃ」
 それになるというのだ。
「それになる」
「それがしが」
「うむ、どうしてもな」
 それでというのだ。
「ここまで来られる者もおらず」
「そして風魔殿も」
「もう誰にも教える気はない」
 己の術をというのだ。
「だからな、しかしそれだけにな」
「それがしにですな」
「術を身に着けてもらいたい」
 是非にというのだ。
「頼むぞ」
「それでは」
「風を自由に使うだけでなく声も聞くのじゃ」
 風のそれをというのだ。
「わかったな」
「はい、是非」
「それはあと一歩じゃ、御主はな」
 由利、彼はというのだ。
「それだけのものが備わってきておる」
「風の声を聞くまでのものが」
「そしてじゃ」
「風を自由に使うことも」
「あと少しじゃ」
「あと少しで出来る様になる」
「だからやっていくぞ」
 修行、それをというのだ。
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