第五幕その九
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「この件は」
「太田さんと太田さんの感性が理解出来る人の問題?」
最後に言ったのは老馬でした。
「つまりは」
「うん、ここで大事な言葉があるんだ」
先生はここまでお話してそのお話の核心とも言える言葉を出しました。
「デカルトの言葉だけれど」
「ええと、確かフランスの鉄j学者?」
「数学者でもあったわね」
「天動説を秘かに指示していたっていう」
「あの人ね」
「うん、我思う故に我あり」
この言葉を出したのでした。
「この言葉だよ」
「つまり太田さんがどうか」
「あの人がどう思うかなの」
「それが一番大事なの」
「そういうことなの?」
「周りの言葉も大事だよ」
それもというのです。
「けれど批評家は結局批評家でしかないんだ」
「画家さん自身じゃない」
「その人自身じゃない」
「感性もなのね」
「その人自身のものなの」
「感性が近かったり合っていてもね」
それでもというのです。
「その人じゃないんだよ」
「あくまでその人なんだ」
「その人がどう思うかなんだ」
「スランプかどうかは」
「その問題なんだ」
「そうだよ、そこが大事だからね」
だからというのです。
「一番大事なのは太田君がどう思うかだよ」
「スランプを抜けたと」
「そう思えればいいの?」
「さっきそれでもってお話になったけれど」
「それでも」
「そう、スランプから脱出したってね」
まさにというのです。
「自分ではっきり認識したら」
「それでなんだ」
「スランプを脱出した」
「それでなるんだ」
「そうしたものなんだ」
「そうだよ、それがスランプなんだよ」
まさにというのです。
「自分がどう思うかだよ」
「それが答えなんだ」
「我思う故に我ありで」
「自分がスランプを完全に抜けたって思えば」
「そうなるんだ」
「北斎も言ってたしね」
日本の浮世絵画家のお話もするのでした。
「あと十年生きていたら本当の画家になれたってね」
「つまりずっと本当の画家じゃなかったんだね」
「九十歳まで描いていても」
「そうだったんだ」
「あと十年だから百歳だよ」
そのお歳になっていればというのです。
「北斎の場合もね」
「じゃあ一番大事なのは自分自身」
「それが芸術でなんだ」
「スランプもそうなのね」
「結局は自分自身なのね」
「本当に自分自身だよ」
何といってもというのです。
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