悠那
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き出しになっていて、木々が林のように群生していて見通しは悪い。《オーディナル・スケール》がプレイできる場所で、あまり人目につかず、ドローンが上空に飛んでいるという条件は全て満たしているものの、いるかも分からぬ焦燥感に晒されてしまう。
「ん……?」
そして走っていった先に、突如として開けた空間が現れた。白を基調にした中世風の舗装に、緩やかに流れていく綺麗な川の周りには、色とりどりの花が咲いている。どう考えても代々木公園の風景ではないそこに、まるで異世界に迷いこんで来てしまったかのような錯覚と、どこか懐かしいような既視感を感じさせていた。
だが、そんなことより――俺の視界は、橋の上で歌う白い少女に向けられていた。
「ユナ……?」
震えた呼び声に、白い少女――ユナはゆっくりと振り向いた。フードの下に隠されていたその表情は、眉ひとつ動くことはない鉄面皮だったものの、記憶の中に存在する彼女の顔と全く同じものだった。ノーチラスの仲間なのか? 生きていたのか? 目的はなんだ? ARアイドルの『ユナ』と同じ顔なのは? レインとSAOで何があったんだ? ――そうして、幾つもの質問が脳内で現れては消えていく。
「お前は……誰だ」
『誰なんだろうね。でも確かなのは、私はあなたが知っているユナじゃないこと』
脳内で巡った問いかけは全て消え失せ、無意識に口から出てきた質問に対して、ユナはフードを下ろしながら答えた。ソプラノ調の言葉にこちらをからかっているような様子はなく、表情も相まってどこか自嘲するようで。その答えに対してこちらも、『死人』が蘇るわけがないと再確認する。
そう、『ユナ』はあの浮遊城で死んだのだ。
『それでも、『ユナ』の記憶は私に戻ってきている』
「それじゃ……」
『あなたのことも』
戻ってきている――とはどういうことか、そもそも目の前の『ユナ』ではないユナが何者なのか、まだ分からないことばかりだが。とにかく、こちらからの問いかけにユナは小さく頷いた。
――かつて、あの浮遊城において。かの血盟騎士団が台頭しはじめた中層攻略の際、俺は攻略組を道具や素材類などの仕入れで支えていた、ある商人ギルドへと所属していた。死の恐怖から攻略組には参加することは出来なかったけれど、それでも間接的に攻略に参加しているのだと、自らに言い聞かせていた時期だ。
商人ギルドとはいえ俺の役割は戦闘が主であり、攻略組との商談はリーダーであるアリシャが担当していた。よって他のメンバーは休息時間と同義であり、当時は25層にあった血盟騎士団の本部を出ると、特に意味はないが一人でブラブラとしていた時だ。
そこで俺は彼女と出会った。時刻はすっかりと夜になってしまっていて、NPC以外の人通りなどま
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