悠那
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のも確かだけどな……」
「ああ……」
キリトがそうして口ごもるように、クラインたちの言っていることも理解は出来るものの、割りきることが出来ないのは俺たちがまだ子供だからか。あの《SAO》がなかったのならば、今の俺たちは全く違う人間になっていただろうと、自嘲気味にだが断言は出来る。そんなことを言ってしまえば、生還者学校でまた特別な相談プログラムが組まれてしまうが。人格が形成される年齢にあったあれほどの出来事に、まるで影響を受けるなというのも無理な話だ。
「割りきれないな……」
そんな自分を形作っている記憶がなくなってしまえば、自分は今までの自分でいられるのか、という自分が自分でなくなる恐怖。先日はリズに『あんなクソゲーの記憶がなんだ』と啖呵をきったはいいが、そんなリズが今なお味わっている恐怖に、逆の立場なら俺は耐えることは出来ないかもしれない。
「……よし。それじゃあ――」
ならばこそ、そんな恐怖をリズたちに与えた奴らが許せないと、キリトと言葉を交わすまでもなく通じあった。そうしてお互いに決意を新たにし、行動を始めようとすれば。
「あ、お兄ちゃ−ん!」
「スグ?」
病院の前に停まったバスから、見知った少女がバッグを片手に飛び降りてきた。すぐさまこちらに駆け寄ってきたかと思えば、まるでおまけのように「ショウキくんも」と付け加えられつつ、直葉もばつの悪そうな表情でバッグの中身を漁りだした。
「会えて良かった−。はいこれ、お弁当」
「お。わざわざ悪いな」
「えへへ。怪我したら承知しないんだから、頑張ってよね」
「ん……?」
お兄ちゃんはこっち、ショウキくんはこっち――と、弁当箱が入ったポシェットをわざわざ指定されて渡されると、直葉はバッグを持ち直してガッツポーズを作る。キリトが何やら不審げにこちらの弁当箱が入ったポシェットを見ていたが、その視線に気づいた時にはすでに弁当箱は俺のリュックの中に収納されていた。
「それじゃあ、私もクラインさんたちのお見舞いだから!」
「俺たちなんかより、スグの方が喜ぶだろうからな。よろしく頼むよ」
「……どうやって説得したんだ?」
何か言いたげにしながらも、こちらから逃げるように立ち去っていく直葉の後ろ姿を眺めながら、聞こえないような小さな声でキリトに問いかけた。直葉なら「自分がオーディナル・スケールを攻略する」と言いそうなものだが、というこちらからの言外の問いかけに、キリトはこちらから視線を逸らしながら答えた。
「……別に。昨日、話しただけだよ」
「……そうか。じゃあ、手はず通りに。そっちは頼む」
まだ直葉は完全に納得した、とは言い難いようだったが。あまり言いたくなさげだったのを無理して聞くことも
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