スペクタクル・クライシス
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ルーラと残った装甲を吹き飛ばし、何度も何度も転がりながらも立て直そうとして――
「負け、た……う、あ……うあああああああああああああああああっ!! ああがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
ダイバが両腕で頭を抱え膝から崩れ落ち、金切り声に近い絶叫を上げる。ガルーラもメタグロスも、立ちあがることが出来なかった。切り札をすべて使い尽し、技も体力もない。自分の敗北が確定し、ポケモンバトルに勝ち続けチャンピオンを超えるという自分の存在意義が崩れ去ったダイバは母親を見失った赤子のように泣き喚く。ジェムはラティアスを褒めてあげる余裕もなくダイバに駆け寄ろうとした。
「ダイバ君、落ち着いて――」
「やめろジェム。今お前が慰めてもダイバにとっては惨めさが増すだけだ!ダイバのためにも勝ったというなら、泣き止むまで話しかけるな!」
勝負が終わると同時にこの展開を予測していたのか、いつの間にかジェムのすぐ傍まで来ていたドラコが無理やりジェムを止めた。アルカはベンチに座って耳を塞いでいる。ドラコはダイバの声にかき消されぬよう大声で諭した。
「そんな……何かしてあげられないの?」
「お前にはわからんかもしれんが、男にとっては自分を負かした女に慰められるなど傷口に塩を塗られるよりも屈辱的なものだ!わからなくてもいい、今は泣かせてやれ!」
「つっ……!」
「あああああああああああああああああああっ!がああああああぐああああああああああああああっ!!!」
ダイバがおかしくなってしまうのではないかと思えるほどの悲鳴にジェムの身が本能的に竦む。自分が勝ったせいでダイバが壊れてしまったらどうすればいいのかと思うと、ドラコを振り切ってでも駆け寄りたくなった。だがドラコは意地でも話すつもりはないらしく強く腕を掴んでいるし。何よりも彼女は真剣だった。
「わかった……でも、泣き止んだらまた一緒にお喋り出来るわよね?」
「……」
ドラコは答えなかった。今までの旅の軌跡をすべてぶつけた勝負の結果はジェムが勝ち、ダイバは負けた。本当にこれがダイバや自分にとって良い結果になるのか、自問自答しながらジェムはダイバが泣き止むまで、凄まじい金切り声を聞き続けていた――。
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