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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
【第579話】
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「え、えぇ。 ……ヒルトくん、美味しいおにぎりのお礼は無いのかしら?」

「え?」


 まさかここで言われると思わなかった、内心焦ると楯無さんは熱っぽい視線を送ってくる。

 そして、上顎をあげて瞼を閉じ、自身の胸の前で手を組む。

 何をしてほしいか理解した俺、全身の熱が上がるのを感じる――。

 触れるだけのフレンチキス、それが終わると楯無さんはソッと唇をなぞる。


「……うん。 ヒルトくん、午後からも宜しくね? それじゃ、いこっ」


 目映い笑顔を見せ、楯無さんは俺の手を引き実況席へと戻るのだった。

 一方――。


「せっかく我々が視察に来たというのに、パイプ椅子しか用意出来ないとは……」

「文句を言わないでください。 今回の視察を企画し、捩じ込んだのも私ですから文句があるのであれば私にお願いします」

「か、会長に文句等と畏れ多い……」

「そうですとも……」


 口々にそう言うも、本心は違っているのは会長――レイアート・シェフィールドには分かっていた。

 ウィステリア・ミストに推され、会長職についたレイアートだが明らかに若すぎる。

 だから委員会の人間には面白くない、若いだけで選出されたのが気に入らないという人間も居る。

 だが、勿論レイアートにも委員会の中には味方がいるのも事実、その人物は力を持っている。


「もう午後の部が開始されます。 今日来た理由は既にわかっているとは思いますが――」

「えぇ、わかっていますとも」

「有坂ヒルトの代表候補生選出――それに相応しいかどうか、ですね」


 口々に言うも、選出する気はなかった。

 広告塔として既に織斑一夏が居る、彼は織斑千冬の弟であり、ネームバリューもスター性も兼ね備え、その実力も高い。

 実力に関しては書類のみの確認だったが、織斑千冬の弟というのが視野を狭くしているのだろう。

 とはいえ、運動会のメインは女子――下手したら有坂ヒルトの出番はないかもしれない。

 勿論そちらの方が五人に取っては好都合だった。

 理由は簡単、有坂ヒルトの代表候補生選出せずに済むのと同時に、会長の先走った失態を槍玉に挙げて会長職から降ろす事も出来るからだ。

 だが――そんな五人の思惑通りに事は進まない。

 運命は着実に変わろうとしていた。
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