第26話<要撃>
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上の島風をチラッと見た。
「島風一隻では、これ以上の対空戦力は期待出来ないのでは?」
そのとき
「あっ」
夕立が声を上げた。
「入電……比叡が来るっぽい」
「あ、そうか」
私はそっけない返事をした。戦艦は貴重な戦力だけど……比叡だとなぁ。どうしても不安が付きまとう。
海の上から島風が大声で叫んでいる。
「ねぇ、私も対空砲火くらいあるんだからさぁ!」
私は振り返る。
「なんだ聞こえてたのか?」
「バカにしないでっ!」
珍しく島風が膨れっ面だ。意外に可愛い。
直ぐにサイレンに乗って敵影が数機、見えてきた。
「比叡はまだか?」
「あ!」
「境水道大橋の向こう……」
夕立と日向の指差した方角に白い服の、それらしい陰が……と思うまもなく「斉射ぁ」……と、叫んだように見えた。
境水道の海面に、ひときわ明るい光を放ちながら比叡は要撃を開始した。ズドンという砲声が境水道に、こだまする。
「負けないんだから!」
「ありゃ?」
見ると島風が対抗意識を燃やしている。大丈夫かな、こいつら。
「連装砲ちゃん、いっちゃってぇ」
「……って、おい!」
頼むから町の真上で撃墜するなよ! ここは大海原じゃないんだから!
私は焦った。
「艦娘って、そもそも、こういう市街戦には向いてないんじゃ?」
「えぇ?」
首を傾げている夕立。いや、そもそも、お前も向いていないって。
急にズドン! という砲撃音……島風と連装砲ちゃんによる迎撃が、こっちの海からも始まった。
「……」
気のせいか日向がムズムズして見える。
「不覚……」
聞えるか聞えないかの悔しそうな呟きが聞えてきた。
さすがに日向には駆逐艦ほどの無鉄砲さはない。それでも艦娘だ。目の前に敵が展開して手も足も出ないのは悔しいだろう。
「もう少し堪えろ日向。直ぐに活躍できるさ」
私が言うと彼女はフッと微笑んだ。
「有り難うございます、司令」
もともと私と日向は付き合いも長い。しかし美保に来てからは彼女の意外な面ばかり見ているようだな。
……まあ、それも彼女の魅力の一つと思えば良いか。
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