その生誕に祝福を
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、ふと思い出した。
あの時。アルカが自分で張り付けたくせに剥がし方を忘れた仮面に強引にヒビを入れていって、こちらに手を差し伸べたあの日。今もたった一人、同居人も恋人も知らない、ヒビの入った仮面を知る人。あの時言った通りに、今も目を逸らさずにいてくれる人。ただ一人、アルカが弱音を吐ける相手。
年下相手に情けねえな、と苦笑して、口を開く。
「……あのさあ」
「何」
「今から凄え変な事言うと思う」
「そう」
「多分、いろいろ言いたくなると思う」
「ふーん」
「けど、何も言わずにちょっと聞いててほしいんだ」
「いいわ、聞いていてあげる」
少しの迷いもなく頷いたのに小さく礼を言って、立てた片膝を抱える。ぼんやりとギルドを眺めながら、思いをそっと紡いでいく。
「毎年の事だけどさ、みんな盛大に祝ってくれるじゃん。…今でこそ普通に受けられるけど、昔はそうじゃなかったんだよ」
「ほら…オレ、捨てられたからさ。じーちゃんもばーちゃんもよくしてくれたけど、やっぱり何か違うっていうか……祝ってもらう度に、じゃあ何でって思ってた。何で親父は、母さんは、姉貴は、オレを置いて行ったのって」
「多分、理由があったんだ。オレには今もよく解ってないけど、オレを置いて行く理由があったんだと思う。…けど、だからって割り切って考えるとか、出来ないし」
「だから、誕生日おめでとうって言われる度に苦しかった。オレは捨てられたのに、いらないってされた子供なのに、その誕生祝ってどうするんだって。…オレなんて、そんな事言われるような奴じゃないのにって」
「それはギルドに来てからも同じでさ。お前相手だから隠さず言うけど、受け入れられるようになったのってつい数年前からなんだよな。……姉貴が死んだ頃、なんだけどさ」
「姉貴から、手紙が来たんだ。突然何だと思って慌てて読んだよ。中にはエバルーがどうとか本がどうしたとか、訳解んねえ事ばっかり書いてあって……その中に、あったんだ」
「――――“お姉ちゃんは、アルカンジュの事が大好きだよ”って」
「……単純だろ?それだけの、本心かどうかも解らねえ言葉で、よかったって思ったんだ。ああ、オレは生まれてよかったんだって。オレには、オレの事を大好きだって言ってくれる家族が、まだいたんだって。嫌いだから、いらないから、だから捨てられたんじゃないって思ったら、ほっとした」
「今日、おめでとうって言われて。プレゼントも山ほど貰って。ご馳走食って、飲んで、騒いで……疲れて寝ちまって、それで起きたら、みんなも同じように寝てて。…それ見てたら何か、幸せだなあって、思ったんだ」
「みんながくれるおめでとうを、捻くれたりしないで受け止められてよかったって」
「こうやって祝ってくれて、一緒に騒げる
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