その生誕に祝福を
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にいるのはルーとミラの二人で、二人のうちこういう事をしそうな方の名前を呼んでみただけだったのだが。
「残念だったわね、ルー」
「今日の為に、頑張って気配消す練習したんだけどなー…やっぱり一ヶ月はかけるべきだったかも。三日じゃ無理だねー」
「つかお前、そんな練習してたのか」
「うん!頑張ってティアの背後取ろうとしたんだけど、全然出来なかった!いっつもギリギリで気づかれちゃって」
えへへ、と笑うルーから視線を外してティアを見る。目が合った彼女はちょっと口元を緩めて小さく肩を竦めた。人の気配に人一倍敏感なはずのティアがギリギリまで気付かないとは、と聞いた時は驚いたが、どうやら敢えてギリギリまで気付かないフリをしていたらしい。相変わらずルーには甘いなあ、と思いながら笑い返す。
「アルカ、何笑ってるの?」
「何でもねーよ」
「?…ならいいけど……あ、ミラ!ほら早くっ、ミラが一番に言わなきゃ!トップバッターだよ!」
適当に誤魔化すと、不思議そうに首を傾げていたルーは元々深く追及するつもりはなかったのか、思い出したように声を上げながらくるりと振り返ってミラの手を取った。くすくすと笑っていたミラは、手を取られると目を丸くして首を傾げる。
「あら、私が一番でいいの?」
「だってミラは一番に言うべきだもん。僕は二番目くれればそれで十分だしー、あっ、だったら三番はティアだね!」
「はあ?……ま、貰える位置は貰っておくわよ」
「と、いう訳でミラ、言っちゃってー!」
「それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」
跳ねるように横にズレたルーが満面の笑みで握り拳を突き上げる。
にこにこと微笑みながら一歩前に近づいたミラが、少し身を屈めた。後ろで両手を組んで、アルカの顔を覗き込むようにして、甘く笑う。
「アルカ」
「ん」
今の自分の顔を鏡で見てみたくなった。きっと、可笑しくて笑い転げたくなるくらいにだらしない顔をしているのだろう。その自覚があった。
笑うように細めた目も、知らず知らずのうちに緩んだ口元も、引き締められない頬も、きっととんでもない事になっているに違いない。ティアに言わせるところの「惚気顔」というやつだろうか。普段は顔を顰めた上で追い払われるほど鬱陶しがられているが、今日くらいは許してほしい。
「誕生日、おめでとう!」
「……おう、ありがとな」
満面の笑みと共に贈られた祝福を噛みしめながら、アルカは差し出された花束を受け取った。
――――それが、今日の朝。
ふわり、とすぐ近くで花の香りがして、ふ、と意識が浮上する。頭だけを上げると、視界に銀色が飛び込んだ。
「……ん、ぅ…?」
髪をぐしゃぐしゃと乱しながら体を起こす。長い事同じ姿勢でいたせいか
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