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歌集「春雪花」
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 夏草の

  掠るる葉音

   聞きたりて

 独りを夜風に

    問うも虚しき



 風そよぎ夏草は揺れ…幽かに葉音が聞こえてくる夜更け…。

 彼に会えない日々が連綿と続くだけの毎日…恋しさは溜め息となって霧散しては、また募り続ける…。

 なぜ私は一人…寂しく生きているのだろう…。

 なぜ…彼には会えず…共に在れないのだろう…。


 解りきったことを口にしたら…虚しさだけが私を抱いた…。



 逢ふもなく

  明けし朝の

    光りさへ

 侘しさ覚ゆ

     菖浦月かな



 会いたくても…会う約束さえ出来ない…。

 知っている…彼には、私なぞ必要ではないのだ…。

 いや…初めから要らぬ存在なのだ…。

 淋しさに埋没する心…まるで蟻地獄のようだ…。
 蟻地獄であれば…ウスバカゲロウとなって刹那の命を美しく散らせるだろうに…私は…。

 朝の力に充ちた光りさえ、私にはなんだか物悲しく思え…なぜ生きて行くのかを考えた…。

 彼の居ない未来なぞに…どんな意味があるのだろうかと…。


 五月の抜けるような青空…答えは出せぬままに…。




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