第58話『逸脱』
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「ねぇねぇハルト、どうだった?」
解答用紙を持ち帰った結月が、驚きを隠せていない晴登に問う。晴登はギギギと機械の様に結月を振り向くと、震える声で伝えた。
「ヤバい、92点って・・・」
自分で言ってて、身体が熱くなるのを感じた。
90点と云えば、勉強できる奴の類だ。その中にようやく自分が入ったことが、とても嬉しい。いわば、有頂天状態──
「あれ、ボク95点だけど・・・」
「……え?」
晴れた気分は何処へやら、一瞬で晴登の表情は曇った。
* * * * * * * * * *
「それでは、テストの合計点、クラストップ3を発表します。今回は5教科ですので、満点は500点となります」
山本がそう告げたのは、テスト返却が終わってすぐのことである。結月に数学の点数で負けたことを引きずりながら、晴登はその話を聞いていた。
「それでは1位から・・・って、皆さんの予想通りです。暁君で500点!」
「「「おぉー!!」」」
クラス中でどよめきが起こる。確かにこれは予想通りだ。
それにしても、ずっと満点を取っていたのに表情を崩さなかったとか、慣れてるとしか思えない。恐ろしや。
「2位もこれまた妥当、鳴守君で486点!」
やはり大地か。特に勉強している素振りは見せないのに、この高得点。凄いの一言に尽きる。
「そして、今回はよく頑張りました。3位、三浦君で430点!」
「あー凄いな……って、へ!?」ガタッ
あまりの衝撃な出来事に、思わず席を立ってしまう。
……しまった、周りの視線が痛い。
晴登は一瞬で何事も無かったかの様に座り直す。
「俺が、3位…?」
万年平均点のこの自分が。例えクラスだろうと学年だろうと、中間の順位を取っていたこの自分が。
──まさかの、クラス3位?
そう察した晴登は、机の下で小さく──かつ、力を込めてガッツポーズをする。数学の件など、もうどうでも良い。とにかく"脱平凡"ができたことが、とてつもなく嬉しいのだ。
「凄いじゃん、ハルト!」
「そうだな・・・って近い」
「むっ…」
後ろから結月が机を乗り出して、どアップで近づいてくるもんだから、少し手で押さえる。彼女はムッとした顔をするが、如何せん仕方のないことだ。
ま、賞賛は素直に受け取っておこう。
「成績表は後で個別に配布します。今日はお疲れ様でした。では、来週も頑張ってくださいね
こうして、今日のテストは幕を閉じた。
「ん、来週…?」
そう、『今日の』は。
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