第58話『逸脱』
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「ねぇハルト、何点だったら良いの?」
「それは毎度異なるけど・・・80点取ってれば充分じゃないかな。ただ、結月の場合は難しいと思うけど……」
何せ彼女は、日本語を学び始めてから間もない。
それで国語で良い点数を取ることは、さすがに困難を極める。
「えーっと……ボクの点数は73点みたいだね」
「あーそっか・・・って、だいぶ凄くね?」
「間違ってる所は・・・記述問題ってやつみたいだけど」
「なら、漢字とか基礎はできてる訳か」
結月の理解力には本気で脱帽。まだ短期記憶が凄いって可能性も捨て切れないが、彼女は間違いなく逸材である。
約一週間で一つの言語を憶えるとか、とりあえずヤバい。
「これは他の教科も期待できそうだな。俺負けんじゃね?」
「え、ハルトを負かしたくない!」
「いや別に良いんだよ?」
本気でアタフタし出す結月を軽く諌め、晴登は次のテスト返却に備える。
国語だけが良くて、その他がダメダメ、だなんてことには成りたくないが・・・どうだろうか。
* * * * * * * * * *
「それでは、最後に数学のテストを返却します」
国語のテスト返却から1時間が経った。言い換えれば、この間に数学の採点が終了したようだ。早い。
ちなみに、今まで貰った他教科の点数についてだが・・・凄かった。本当かと疑うレベルで。
晴登は机の中から、社会と英語と理科の解答用紙を取り出す。その紙にはそれぞれ、
社会『86』
英語『83』
理科『80』
と点数が示されていた。
「……やっぱおかしくないかな、これ」
普段平均点の常連である晴登が、こんな平均点らしからぬ点数を取っても良いのであろうか。もちろん採点ミスも疑ったが、全然そんなことも無い。
──自分の実力で取った。
そう結論づけるしかないのか。だとしたら…超嬉しい。
「三浦君」
「はい」
自分の名前が呼ばれたので、返事をして解答用紙を取りに行く。不思議と足取りが軽く感じられた。
「お疲れ様でした」
「ありがとうございます」
晴登はその場で点数を見ることはせず、席に戻った。
「結月さん」
「はい」
今度は結月が解答用紙を貰いに行く。
ちなみに、彼女の他教科の点数も決して悪くはなかった。例えるなら、従来の晴登が取るような点数ばかり。
尤も、今回の晴登は今までとはひと味違う。
「この流れなら、きっと数学も良い点数なんだろうな・・・」ピラッ
その瞬間、晴登の指が止まった。
「なんってことだ……」
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