第58話『逸脱』
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?」
「ふぇぇ……」グタッ
後ろを振り向いて見えたのは、無気力に机に突っ伏す結月の姿だった。今にも溶けたり、蒸発したりしそうなくらいに。
「大丈夫か?!」
「うん、大丈夫大丈夫……ただ、ちょっと疲れた……」
「ちょっとじゃないだろ!?」
ちょっとどころか、かなり消耗してる様子の結月。初めてのテストでここまで疲れるものなのだろうか。
昔の自分がどうだったかは思い出せない。
「さて、皆さん疲労が溜まっていることと思います。しかし、まだ一日は終わっていません。今から採点した分のテストを返却します」
「「「えぇっ!!?」」」
クラス全体の驚きの声が重なる。無論、晴登もその一人。
未だかつて、今日やったテストを今日受け取るなんて経験はない。
「静かに。今のところ、さっきやった数学のテスト以外は採点を終えています。これの見直しをしてる間に、数学の採点も終わることでしょう」
「どういう仕組みだよ…」
指摘せずにはいられないので、ボソッとツッコむ。
一体どんな採点システムが有るのだ、この学校には。
「では、まずは1時限目の国語から返します。名前を呼ばれたら受け取りに来てください。まず、暁君」
「はい」
気だるそうに席を立ち、解答用紙を受け取る伸太郎。その表情は終始揺るがず、どんな点数を取ったかなんて予想はできなかった。
尤も、そんな反応は伸太郎だけのようで、他の人たちは嬉し顔も苦い顔もオープンでわかる。
ちなみに、大地も反応は少し薄かったが、莉奈に至っては点数が低かったということが丸分かりな態度だった。
そしていよいよ・・・
「三浦君」
「は、はい」
晴登は緊張の面持ちで、山本のいる教卓に向かう。席が教室の後ろということもあり、教室の前にある教卓に向かう際は視線がよく集まって落ち着けない。
そしてやっとの想いで辿り着き、解答用紙を受け取った晴登は、点数を見て絶句する。
「は……89点…?」
決して、この点数が低いから驚いている訳ではない。むしろ逆だ。自分にしてはとても高い。
「夢か何かか…?」
しばらく点数を眺めてボーッとしてると、山本に席に戻るよう言われ、慌てて戻る。
「最後に、結月さん」
山本の結月への呼び方が変わったことはさておき、いよいよ結月が呼ばれる。彼女にとって、初めてのテスト返却だ。
少々動きのぎこちない結月が教卓に向かう。
「よく頑張りましたね」
「あ、ありがとうございます」
震える手で解答用紙を受け取った彼女は、真っ先に席に戻った。
その後、山本によって見直しの時間が設けられた。
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