第58話『逸脱』
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ういう目で見られてるんだから、少しは時と場合を考えろよ?」
「……お、おう」
大地の言葉に、思わずしどろもどろ。
そういう関係になったつもりはないが、そうとして見られているとなると、やはり周囲の目も気にしなければならないようだ。
「え、何の話?」
「いやさ、俺たちが──」
「皆さん、席についてください」ガラッ
天然を顕にする結月に説明を試みようとした瞬間、山本が教室に入ってくる。時間を見ると、もう朝のホームルームの時間だ。
仕方なく、話の締まらないまま晴登も結月も席につく。
「それでは予告していた通り、今日はテストを実施します」
その一言でクラスは静まり返る。果たして、それが緊張によるものなのか絶望によるものなのか、原因は定かではない。
「5分後に始めます。各自、準備をして下さい」
そう言うと、山本はテスト用紙の整理を始めた。
──しばしの静寂。
各々は一体何を考えているのだろうか。
「ねぇ晴登」コソッ
「ん?」
「やっぱりボクも緊張しちゃうな…」
そもそものテストのルール自体、異世界人の結月は知りえなかった。晴登は一応教えているが、実際に結月がテストを受けるのはこれが初めて。
言ってしまえば、テストでルールを気にする必要はない。しかし、初体験というのは何だかんだで緊張するのだ。晴登が人に話しかけることができないことも然り。
だけど、晴登は笑顔で言った。
「大丈夫だって。結月もそう励ましただろ?」
「……そうだったね。うん、頑張る!」
晴登の言葉に安心したのか、結月も笑顔を返した。
ちょうど緊張が解けたところで、テスト用紙の配布が始まる。晴登は問題用紙と解答用紙を前から受け取り、背後の結月に回した。
「ふー……」
いざ解答用紙を目の前にすると、どうしても鼓動が早まってしまうだから晴登は深呼吸をして、リラックスを図った。
「皆さん、しっかり行き渡りましたか? それでは、テスト開始!」
──長いテストの時間が、幕を開けた。
* * * * * * * * * *
キーンコーンカーンコーン
「解答を止めてください。では、後ろから回収をお願いします」
終了のチャイムを起点とし、クラス全員が機械の様に用紙を回していく。
そして、回された用紙を山本が受け取ると、彼は時限の終わりを告げた。
「・・・終わったー!」
晴登は両腕を伸ばし、張り詰めていた気持ちを緩める。やはり、テスト後の開放感はとても心地良い。
「結月、出来はどうだった・・・って、おい!
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