第58話『逸脱』
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っていた。これもまた、気分を下げる原因となる。
しかし、四の五の言ってられない。なぜなら、今日はテスト当日なのだ。妙な倦怠感が身体に残っているが、気を引き締めなくてはならない。
「ハルトー朝だよー」ガチャ
「あ、結月。おはよう」
「うん、おはよう!」
朝から元気な結月の挨拶に、たまらず笑みが溢れる。
そういえば、この日常も当たり前になってきた。初めは、智乃以外の誰かに挨拶されたということで新鮮さを感じたが、今はもう生活のピースとして定着している。
そう思うと、少し寂しい気がしてきた。
「ハルト、今日は頑張ろうね!」グッ
「そうだな」
結月が言っているのはテストの事だろう。実はここ数日での努力で、彼女はメキメキ学力を付けている。
確か今は、テスト範囲にはギリギリ及ばないが、中学の勉強に入っていた。ちなみに、心配の種であった課題も終わらせてある。
「こうして並べてみると、結月って凄いな」
「え、惚れちゃう?! 止めてハルト、恥ずかしいよ…!」
「…病院行くか?」
* * * * * * * * * *
雨の中を傘を差して歩き、二人は登校する。
教室に入った時には、もう大半の人が席に座って自習していた。
とりあえずという気持ちで、晴登は一人に近づく。
「ん、おはよう晴登」
手を上げて挨拶してきたのは大地。彼は自習している様子でもなく、というか特に何もしていない。
「おはよう大地。余裕そうな顔だな」
「出会い頭でその言葉ってどうよ。別に余裕って程もないけどな」
「ふーん」
大地の事だから嘘だと疑いたくなるが、そうも言ってられない。人に余裕を問うている余裕こそ、今の晴登は持ち得ないのだ。
つまり、今の会話はただの気の紛らわしだ。
「大丈夫、ハルト?」
「…何が?」
「隠す必要なんかないよ。ハルトってば、朝からずっとソワソワしてるもん。どうしてか知らないけど…何とかなるって!」
「結月…」
自分の方が厳しい状況にあるにも拘らず、励ましてくれる結月。その優しさに触れて、元気を出せない奴がどこに居ようか。
「…頑張ろう、結月!」
「うん!」
「」ニヤァ
「うおっ、莉奈!?」
「いや〜お熱いね。見てる私たちがお恥ずかしいよ」
晴登はその言葉を聞き、慌てて辺りを見渡す。
すると、クラス中の視線が晴登と結月の絡みに集まっていたことがわかった。要は、今までのやり取りを全て見られていたのだ。
決して目立ちたい訳ではない晴登が羞恥を感じるには、十分過ぎる攻撃である。
「晴登、一応お前らはそ
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