第17話『黒獅子と黒竜〜飽くなき輪廻の果てに』
[6/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
てきた傭兵人生。凱とシーグフリードという『超人』を目の当たりにしても、驚きこそしたものの、フィーネは両者を推し量るに全神経を注いでいた。
相手の強さを図れぬ傭兵は三流もいいところ。このまま勝負を続ければ、心に迷いがある凱が明らかに不利だ。しかし――
乱れていた呼吸を整えた凱は、静かにつぶやく。
その声はどこか冷たく……その目はどこか……黒かった。
穏やかだった凱の目は、徐々に竜の牙のごとく鋭さを肥大させていく。
「――――行……ぞ」
――――幻影翼。そうとしか表現できない体裁き。
夜という闇の深さも相まって、一瞬だがシーグフリードの知覚反応を遅らせた。
アリファールの一閃――――
流星の如き抜刀――
一言で表すにはそれで十分なほど、銀閃の芸術品。
銀閃の剣光が、瞬きよりも短い間に、凱の表情を映し出した。
そして、フィグネリアはわが目を疑った。
「……ガイ?」
だが、戦況は彼女の反応を許すはずなどなく、次々と、一刻一刻と変幻していく。
「――――ちぃぃぃぃ!!」
毒づいた捨て台詞とともに、シーグフリードは拳と蹴りの暴力で、乱雑に凱をあしらった!!
「ぐはあぁぁぁ!!……」
苦悶の文言を上げる、凱の悲鳴。
肺中の大気を無理やり吐き出されたような感覚。呼吸器官の異物を押し出す生理現象が、凱の呼吸を乱そうと攻め立てる。
(なんだ……今の動きは?)
対してシーグフリードは、牽制したにも関わらず、己の知覚能力を疑った。戸惑ったのだ。
先ほどのガイの動きが、断然速く、重く、鋭くなった。
全く読めない……いや、違う。
全く感じなかったのだ。凱の動きを――
相手の行動を読むには、まず五つの知覚で感じなければならない。
敵の姿を見据える視覚。
敵の匂いを辿るぐ嗅覚。
敵の手ごたえを掴む触覚。
敵の劣等感を嗜む味覚。
敵の位置を握る聴覚。
例え人外たる悪魔や魔物でも、必ず人間に比する感覚機能が存在する。半分悪魔の血を引いているシーグフリードは、常人の遥か上を行く神経感覚を所有している。
にも拘わらず―――――神経の糸を極限にまで張っても『反応』どころか、反応の予兆である『感応』すらできなかった。
(……もう少しか?)
銀髪鬼の口元が吊り上がる。
今、獅子王凱という、シーグフリードの目前にいる男は、その心の檻を開け放とうとしている。
正確には、勇者という檻が、獅子王という獣にこじ開けられようとしているのか――定かではないが。
対して、凱は自分の奥底から『何かが沸き上がる衝動』を感じていた。
誰かが……俺の中から出てきやがる。
この感覚……『市』における魔剣強奪事件の時と同じだ。
(俺は……この力を使わないと誓ったんだ!……
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ