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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十三話 帝国領侵攻
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ね、無いのではなくて作れないのでは有りませんか、レベロ委員長」
「……」
今度は無言でレベロがサンドイッチを食べた。お前も自棄食いか、レベロ。
元々同盟は帝国より弱小だった。何とか追いつこうと必死だったはずだ。その時点で占領計画など作れるわけがない。ようやく国家体制が整ってきた頃にはイゼルローン要塞が同盟の前に塞がった。占領計画はイゼルローン要塞を落としてからと考えたのだろう。
と言うより、そうするしかできなかったのだと思う。同盟の人口は百三十億、帝国は二百四十億、倍近い人口を持つ帝国を占領して治めるなど、どう考えれば良いのか……、どれだけの費用が発生するのか……。おまけに政治体制も文化もまるで違う上に情報も不十分だ。占領計画など作りたくても作れなかった。イゼルローン要塞を落としてからという先送りで誤魔化すしかなかった、そんなところだろう。
「准将、では周辺地域から少しずつ攻略した場合はどうかね」
レベロ君、もう一つハムチーズサンドを食べて水を飲んだら答えよう。少し待ちなさい。ついでに卵サンドだ、水も一口。
「その場合はもっと酷くなりますね。おそらく財政破綻と国内分裂で同盟は滅茶苦茶になるでしょう。それはレベロ委員長が一番分かっている事のはずです」
「……」
レベロが不機嫌そうに顔を顰めた。やはり図星か、感情がもろに顔に出るんだな、レベロ君。それでも政治家かね、君は。しかし分かっていて問いかけてくるとは根性悪にも程が有るな。それともまさか本当に分からない? 一応説明しておくか……。
辺境星域を少しずつ浸食する、堅実に見えるが結果は碌でもないものだろう。帝国政府は領土の侵食など名誉にかけて受け入れられない。だがそれ以上に民主共和政が領内に蔓延ることを許さない。一つ間違えば辺境星域で平民による革命騒ぎが発生するだろう、危険なのだ。
イゼルローン要塞の建造は同盟領への侵攻の拠点の確立、そして帝国領の防衛拠点の確立でもあるが、もう一つ、イゼルローン要塞を置くことで回廊を軍事回廊に限定するという考えが有ったのではないかと俺は考えている。要塞を置くことで民間船の航行を阻止し民主共和政という思想が帝国領内に入るのを防ぐ。
帝国にとっては民主共和政という思想は感染力が高く、致死率も高い厄介な病原菌のような物だっただろう。帝国を病原菌から隔離するためにイゼルローン要塞というマスクを用意した。
帝国にとってはこちらの方が切実だったはずだ。帝国の統治者達が恐れたのは何よりも革命が起きる事で政治体制がひっくり返ることだったろう。そうなれば失脚するだけではない、財産も命もすべて失う事になりかねない。
もう一度言う、帝国が帝国領内に民主共和政主義者の拠点など許すはずがない。帝国軍は同盟が得た辺境領に対して激しい攻撃をか
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