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第八十九話 艦隊再編成、そして、次の章の幕開けです。
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この世界における第六次イゼルローン要塞攻防戦は、原作と異なり、帝国歴487年8月から10月にかけて行われた。自由惑星同盟軍にとって、帝国歴487年5月の第五次イゼルローン要塞攻防戦以来約4年ぶりになるわけだ。
だが、新要塞まで投入した4年ぶりの遠征は勝利に彩られることはなく、150万人の犠牲者と2万隻近い艦艇損傷を被っての大敗北となった。さらに、新要塞に寄せられた多大な期待を「裏切った」といういわば二重の負のベクトルが発生していたのである。
とはいえ、これは冷静に状況を俯瞰できる人間から見れば言えることであって、当の本人たち、とりわけ遠征軍とその救援に赴く人間たちにとっては眼前の仲間を一人でも多く救うことが何よりの急務となったわけである。
エル・ファシルを発進した第五艦隊が急行につぐ急行でまっさきに回廊付近に到着した時、全軍は安堵というよりも今後予想される激烈な戦闘を想定してますます身を引き締める思いでいた。主将であるアレクサンドル・ビュコック中将だけは泰山のごとく司令席から動かず、腕を組んで半ば目を閉じたままでいる。主将が不動の位置を示しているため、焦燥の中にも一定の落ち着きと秩序が保たれているのはそういうことであった。
前方に友軍艦隊、と報告するオペレーターの声にアレクサンドル・ビュコック中将は眼を開けた。
「間に合わなんだか。」
ここまで昼夜急いでやってきたが、回廊での戦闘は終わってしまっているようだった。その証拠が今目の前に現れた友軍艦隊の反応であろう。
「全滅したのではなかったようですな。」
ほっとした表情で参謀長が言ったが、ビュコック中将はなおも前方のディスプレイから目を離さないでいる。その表情に参謀長が再び前方を見た時、彼は息をのんだ。
「これは・・・・・。」
参謀長の隣で幕僚のファイフェル少佐が声を失っている。
目の前に展開していたのは、艦隊でなく、残骸であった。正確には生き残った艦が敗残の艦を引きずってきたのだった。彼らの後ろに宇宙の残骸となった鉄くずが漂っているのがわかった。ビュコック中将もおそらくは内心衝撃を覚えなかったはずもないが、彼はいち早く指令を下し始めていたのである。
「前方には敵反応はないか?」
「ありません!」
「よし、前衛艦隊は回廊付近において哨戒体制に入れ。他は負傷者の救助に当たる。」
ビュコック中将は立ち上がった。
「急ぎ工作艦隊を出せ。さらには病院船隊もフル稼働させろ。なお負傷者がある場合には戦艦から逐次負傷者を収容するのじゃ。」
第五艦隊はこの瞬間戦闘艦隊としてではなく、一個艦隊規模の病院艦隊としてその機能を十全に発揮することとなったのである。
* * * * *
イゼルローン回廊を脱出した自由惑星同盟側はかろうじてティアマト星域にて第五艦隊と合流す
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