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歌集「春雪花」
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 紫陽花を

  濡らす雨音

   沁みたれば

 想い侘しく

    君そ恋しき



 紫陽花に降り注ぐ雨…寂しげな音をたてながら葉を揺らしている…。

 四方を家に囲まれた小さな庭に雨音だけがこだまし…それは心にまで響いてくる…。

 この寂しさを彼に伝えたら…一体どう返してくれるだろう…?

 出来もしないことを考え、自分に苦笑する…。


 彼に…会いたい…。



 星影の

  なかりし夜の

   五月雨の

 雲に隠るる

    月ぞ待ちにし



 星明かりのない真っ暗な空…五月だと言うのに肌寒い夜の闇、雨音だけが聞こえてくる…。

 何もせず、こうして雨音だけを聞いていると、目の前の闇に呑まれそうになる…。

 彼は今…誰かと逢っているのではないのか…?
 彼は今…愛しい人を想っているのではないか…?

 そんな想像ばかりが頭を過り…自分に嫌気が差してくる…。

 あぁ…いつになれば雲が晴れ、月が見えるのだろうか…。

 いや、見ることは叶わないだろう…。


 彼に会うことが叶わぬように…。




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