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青い珊瑚礁
第五章

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「幽霊船なんてね」
「映ってるなんて思わないわよね」
「あの珊瑚礁でね」
「写真チェックしたけれど」
「香織ちゃんはチェックしていたけれどね」
 本来の主役である彼女はだ。
「けれどね」
「それでもよね」
「背景のそんな端まではね」
「まさかと思うから」
「見落としていたわ」
 そこまではというのだ。
「本当にね」
「参ったわ、今回は」
 やれやれといった顔でだ、香織はぼやいた。
「こんなことはじめてだし」
「そうね、けれどそのせいでね」 
 香織が今ぼやいた幽霊船騒ぎでだ。
「写真集とDVDも売れたし」
「前出したのの倍以上ね」
「それに香織ちゃん自身も評判になってるから」
「いい結果になったわね」
「ええ、だからね」
「これはいいってことで」
「そう、怪我の功名よ」
 笑みを浮かべてだ、芳美は香織に言った。
「まあ香織ちゃん自身は怪我してないけれどね」
「私も別に悪い気はしてないわ」
 やれやれと思っていてもというのだ。
「別にね」
「そうよね、じゃあね」
「このことはかえってよしとすることね」
「写真集もDVDも売れたし」
「私の名前も売れたし」
「いいということにして」
 そうしてというのだ。
「これからも頑張っていきましょう」
「わかったわ」
「じゃあ次のお仕事はね」
 芳美は香織にあらためて仕事の話をした、珊瑚礁での楽しい撮影は香織に思わぬ話題をもたらした、しかしそれは彼女にとっていい結果となった。そうした意味でも青い珊瑚礁は彼女にとっていいものだった。


青い珊瑚礁   完


                  2017・5・27
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