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真田十勇士
巻ノ九十 風魔小太郎その十五

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「それはわかるな」
「あそこまでお心の優しい方はおられませぬ」
「他にはです」
「我等にもお優しくく」
「民達にも」
「あの者は仁の心も強い」
 それも非常にだ、幸村は誰に対しても声を荒くさせることは決してなく手をあげることも全くしない。そうした者なのだ。
「だから大助への鍛錬もな」
「厳しいものにはされない」
「そうなのですね」
「だからですか」
「そのことは」
「少し気になる、大助の気質にもよるが」
 こう言うのだった。
「厳しいものはわしの方から教えるやもな」
「大殿ご自身が」
「そうされますか」
「あの仁の強さが政の遅れとなったのじゃ」
 幸村の心優しさ、それがというのだ。
「政は時として厳しい断が必要じゃが」
「それがですな」
「源次郎様は出来ぬ」
「それが為に」
「優しいことはよい」
 このこと自体はというのだ。
「しかしあ奴はそれが過ぎる」
「そしてですか」
「大助様のことについても」
「その優しさが出過ぎぬか」
「それが心配ですか」
「少しな。しかしあれだけの者達もおる」 
 十勇士達のことも言うのだった。
「大助は自然と立派になるわ」
「源次郎様に十勇士達を見て」
「そのうえで」
「そうなる、そしてあ奴もな」 
 大助、彼もというのだ。
「必ずじゃ」
「よき方になられる」
「そうなのですな」
「そう思う。出来れば大助が元服の時まで生きたい」
 昌幸はこうしたことも言った。
「そうも思う」
「左様ですか」
「その様にも」
「思う、長生きはせねばな」 
 昌幸は今は粗食に徹し身を謹んでいた、そうして時を待つのだった。息子や孫達の成長を見ながらそうしていた。


巻ノ九十   完


                           2017・1・12
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