第一章
[2]次話
赤い林檎
林檎は赤い、田中由実奈はこう思っていた。
しかしだ、イギリスから日本に家族の仕事の事情で来たカレン=アーブルは中学校の給食の林檎を見て驚いた顔で言った。
「あれっ、皆赤いね」
「林檎が?」
「ええ、随分ね」
やや英語訛りのある日本語で向かい側の席の由実奈に言った、由実奈は黒髪をストレートのロングにしていて大きな黒い目と楚々としたピンクの唇を持っている、全体的にこけしみたいな外見で小柄である。カレンはその由実奈と同じ位の背で髪の毛はブロンドでふわりとしていて長い、目は栗色ではっきりとしていて白い肌に発育のいいスタイルである。
そのカレンがだ、こう由実奈に言ったのだ。
「赤い林檎がこんなに多いなんて」
「いや、林檎って赤いでしょ」
戸惑いつつだ、由実奈はカレンに返した。
「普通は」
「いえ、イギリスじゃ違うの」
「違うって」
「林檎、アップルは青いの」
こちらの色だというのだ。
「緑ね」
「ああ、あっちの林檎なの」
「そう、イギリスじゃね」
「そうだったのね」
「それが日本に来てね」
給食で出た林檎を見てというのだ。
「まさかね」
「赤い林檎ばかりで」
「びっくりしたわ、お風呂場がおトイレと一緒のお部屋にないのは知っていたけれど」
「イギリスじゃそうよね」
「そう、イギリス以外の国でもね」
西洋の文化圏ではというのだ。
「ユニットなの」
「日本でもそうしたお風呂あるみたいよ」
「けれどそうじゃないわよね」
「まあ大抵はね」
「このことは知っていたけれど」
それでもというのだ。
「まさかね」
「林檎が赤いのは」
「思ってもいなかったわ」
「林檎は青いって思っていたのね」
「そうなの、緑ね」
ここでカレンは由実奈にこうも言った、二人で向かい合って給食を楽しく食べながら。他のメニューはハンバーグにマカロニと野菜のシチュー、パンに牛乳だ。
「日本じゃ青と緑一緒になってるけれど」
「それはね」
「色の認識ね」
「まあ緑ってことでね」
「思っていいのね」
「うん、じゃあ緑にしよう」
林檎の色はというのだ。
「そうしましょう」
「それじゃあね、とにかくね」
「イギリスじゃ林檎は緑なのね」
「そうなの、それが皆赤くて」
あらためてだ、カレンは由実奈に話した。
「今びっくりしてるわ」
「そうなのね」
「日本じゃ何処でもそうなの?」
由実奈のその目を見て尋ねた。
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