第五章
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「粘りのあるチームじゃないぞ」
「惨敗の時は信じられん惨敗じゃ」
「それがまさかか」
「逆転か」
「この勢いは」
まだ小学生だが球場に足?く通っているので試合の流れは肌でわかる、千佳はその肌で感じる危惧に怯えた。
そしてだ、この言葉を出した。
「負ける?阪神に」
「くっ、まだ打つか」
「勢い止まらんぞ」
「阪神強いぞ今日は」
「逆転されるんか!?」
三塁側は狼狽しだした、その彼等に対してだ。
一塁側、もっと言えば周囲は沸き立っていた、勢いを感じ取っていてだ。
「いける!逆転や!」
「九点差いけるで!」
「阪神逆転や!」
「九点差逆転や!」
「まさかのまさかや!」
「球史ではじめてや!」
その八十年以上の歴史の中でだ。
「これはやれるわ」
「今日はいけるで」
「九点差の時はあかんって思ったけど」
「これはいけるわ」
「阪神勝つで」
「いけるで」
「はい、勝ちます」
寿もわかった、妹と同じく肌で感じていたが彼女と感じているものとは正反対のものだった。
「阪神が」
「そやな、まさかと思うけど」
「これはいける」
「行け行け!ダイナマイト打線復活や!」
阪神の代名詞だが実はこのチームは伝統的に投手陣のチームだ、打線はとかく打たずチャンスでは尚更だ。
「よし、行けるで!」
「阪神勝つわ!」
「このまま優勝や!」
まだ五月だがここでこう言うのが虎党だ。
「優勝に向けて逆転や!」
「どんどん打つんや!」
黒と黄色が乱舞して甲子園が縦にも横にも揺れた、そして遂に。
阪神は勝った、試合終了と共に凄まじい歓声が聖地に響いた。
その夜だ、家に帰った寿は満面の笑顔で母に言った。
「お母さん、乾杯していいかな」
「あんたまだ中学生でしょ」
母は満面の笑顔の息子にこう返した、
「お酒は駄目よ」
「コーラあるよね」
「コーラならいいわよ」
「じゃあそれで乾杯しなさい」
「それじゃあね」
「やれやれよ」
寿の横には千佳がいるがこちらはというと。
憮然とした顔でいてだ、こう母に言った。
「お母さん、自棄飲みしていい?」
「あんたまだ小学生でしょ」
母は憮然とた顔の娘にこう返した。
「お酒は駄目よ」
「コーラあるわよね」
「それでも飲んでなさい」
「それじゃあね」
「それ飲んで憂さ晴らししてなさい」
「そうするわね」
二人共冷蔵庫からそれぞれコーラを出してテーブルに座って飲むがだ、寿は一人で乾杯して飲む。
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