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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第二十八話 少女たちの決意 後編
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ついた気がした。
私たちはケイジさんの言葉を聞いて、言葉を失った。
目に見えない深い傷が、小伊坂君の身体に刻まれていたと私は……ううん、ここにいるケイジさん以外のみんなが初めて知った。
驚いて、言葉を失って、混乱して、どう納得すればいいのか分からなくて。
そんな中、いち早く冷静になって声を発したのは雪鳴さんだった。
「……黒鐘は海鳴に長期休養で来たと言ってた。 もしかして?」
「坊主は五年くれぇ前からずっと働いてきた。 仕事内容は、魔導師犯罪者の捜査及び逮捕と、要人警護だ」
「それ、執務官の仕事のはず」
「俺やクロ坊が執務官で、その補佐をやらせてたんだがな……」
「黒鐘は補佐で納得するほど、被害者に対して冷静じゃいられなかった」
「正解。 俺やクロ坊以上にマジになって事件に立ち向かった。 結果、坊主のおかげで逮捕できた犯罪者、坊主のおかげで守りきれた要人は数知れず。 ま、役に立つ存在ではあったな」
雪鳴さんの問いに答えながら、ケイジさんは小伊坂君の今までを語る。
それはどこか自慢げで……だけど呆れていて、馬鹿にしたような口調なのはきっと、今こうして倒れてしまうほどの無茶を、今まで積み重ねてきたからなんだと思う。
そう思えるくらいに落ち着いた私は、私が知らない小伊坂君のことを質問する。
「あの、小伊坂君について、教えてくれませんか?」
「質問が大雑把で分かんねぇな。 どの辺が知りたいんだ?」
「全部……って、それも大雑把ですね。 小伊坂君の過去……なんで小伊坂君が管理局で働いているのかとか、小伊坂君が一人暮らしなのかとか」
それは今までずっと気になってて、だけど聞かずに……聞けずにいたこと。
小伊坂君が雪鳴さん達に話して私に話さなかったのが私を思いやってのことなのは分かってる。
短い間だけどずっと側にいて、小伊坂君がそういう人だって知ることができたから。
だけど、それでも、気を使ってくれたところ申し訳ないけど、私は知りたい。
それが彼にとって知られたくなくて、隠し続けたいことだったとしても、知りたかった。
「小伊坂君がどうして今、魔導師として頑張ってるのか。 それを知りたいんです」
初めて小伊坂君に出会ったあの日、私は海岸で叫んで、泣いていた。
恵まれてるはずのなのに、何かが足りない自分。
満たされてるはずなのに、何かを望んでしょうがない自分。
それが苦しくて、辛くて……。
でも、それをどうにもできなくて、悶え苦しんでいたあの時、小伊坂君は私の瞳を覗き込んで、その奥にある心を見つめていたような気がする。
それと同じように、私も彼の瞳を見つめていた。
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