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の息の根を止め、無様に病死させないための儀式。 それには、私に似た屈強な息子が選ばれると思っていた。 それともタマモやシルクが産んだ父親似の風変わりな戦士、誰でも、誰でも良かったのだ。
「ワルキューレ、お前がやってくれ」
「何だと……?」
「俺の子供の頃からの知り合いは、お前だけになった。 タマモだって前世の記憶を覚えてる訳じゃない。 神無や朧だって、また月に行くまで、何百年も会わなかった」
「い、いやだ… いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだっ!!」
息が切れるまで、ずっと「嫌だ」と言ってやった、だがあの人はこう言ってしまった。
「俺を殺して、お前だけの物にしてくれ」
「嫌だ〜〜〜っ!!」
ずるい、嘘つき、二枚舌、反則だっ! こんな言い方をするなんて、好きなだけ他の女と楽しんだくせに。 ルシオラやシルクなどは自分の命よりもずっと大切にしていたくせに……
それから数週間後、私達は闘技場で多くの観衆に見守られて戦う事になった。
この地域を治める王の最後の戦いを見るため、その映像は国中に放送されていた。 何故その相手が私なのだ? 何故息子達では無いのだ? 私はもう堕落してしまっていると言うのに。
「さあ… 始めようか」
息も絶え絶えにそう言ったあの人、今までの出来事が走馬灯のように浮かび、周りの風景が涙で霞んで見えていた。
「嫌だっ!」
残していた文珠を使って、あの人が一時的に回復した。 だがその効果すら、とても短くなっている。
「行くぞ」
カンッ!
何て弱々しい打ち込み… 昔は霊刀だけで、巨大な兵鬼をも一刀の元に切り伏せたと言うのに。
「やめろっ、やめてくれっ! 私にはできないっ!」
無様にも民衆の前で逃げ回り、泣き叫んでいた私。
トスッ!
そこで腕に鈍い感触が伝わった。 緩い打ち込みを嫌ったあの人は、私の剣の切っ先に先回りしていた。
「うわあああああっ!!」
これは私の悲鳴。 これは私がやるはずだった幕の引き方。 こうして私が死ねば、殉死として認められ、息子が立ち上がって、母の仇を討つ事もできた。 だが私はあの人を倒してしまった。
「いやだ…」
「ありがとう… ワルキューレ… これで、やっと死ねる」
「いやだっ!」
作法に反して止めも刺さず、剣を手放してあの人を抱きかかえる。
「最後まで辛い役目ばかりさせたな… でも一番、愛し… てる……」
そこまで言って、あの人は力を失った。
「いやだああああああっ!! 目をっ、目を開けてくれええっ! お前がいなくなったら私はどうすればいいっ! この子達はどうすればいいんだああっ!!」
私は数万の観衆の前
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