暁 〜小説投稿サイト〜
その日はいつかやって来る
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いいぞ」
「畜生っ! その首、はねられてから後悔しても遅いぞっ、覚えてやがれっ!!」

 手近に有った金になりそうな槍を掴んで逃げて行くのを、咎めもせず見送るあいつ。 武器も持たせず帰すのも礼に反するが、あれは施しになりはしないか?

「あいつが出て行ったら、噂を流してやれ 「実力で魔神を傷付けた、ただ一人の男、弓使いの魔人ユキノジョウ」ってな。 ぐうっ」

 言い終わった途端、朧の胸で男泣きするあいつ。 やっと…… 一人目に出会えたな。

 周りで貰い泣きしている奴らを、キョトンとして見ているタマモとメフィストには、私から説明しておこう。 隠れて追い掛けて行って、殺してしまわないうちに…

 それから、自分の左手を再生させたあいつは、また文珠を使えるようになった。 既にあれが無くても、言葉にするだけで大抵の願いは叶ったが、部下の言霊と思考の力に守られた敵に、文珠はやはり有効だった。 誘惑、離反、隷属、臣下、どんな願いも思いのままとなった。

 やがて、タマモやシルクが呼べば、いつでも転移して来る隊長とグレートマザー。 隊長に付いて来るオプションの量産型アンドロイド。 そして逆天号により、殆どの地域は平定された。
 何よりも、逆天号に再生された魔体の威力は絶大だった。 地球規模の修復のためでは無く、純粋に戦闘用に造られた機体は、どんな兵鬼でも対抗できず、あの「吸引」を防御できる魔法障壁も存在しなかった。
 あれに耐えられるのは他の魔神か、神族でも余程名のある上級の者だけだろう。 


 そして、あの人の元に次々と馳せ参じて来た臣下達。 怪力無双の虎の巨人、ヴァンパイアの男、剣を使う狼女、献上されたランプに入っていた精霊。 全てでは無かったが、領地の中から一人、また一人と見付かって行く、あの人の懐かしい友人達。

 中でも、あの人をパトロンにしようと、援助を願い出た少年を見た時は見物だった。 そいつが目通りを許された時、いきなり駆け寄って抱き締めて、辺り構わず泣いたので、神無がキレて「男の子供にまで手を出すつもりかっ!」となったのは言うまでも無い。

 もちろんその少年の名前はカオス。 それからも余りに一緒に行動し、寝食を忘れて工房に篭り、全ての技術を授けていたので、神無で無くてもその関係を疑った者は多かった。

 今にして思えば、ドクターカオスとは、あの人が転生して記憶を全て失った時。 魔法と機械の技術を残し、再び自分に伝えるために造られた、特殊な下級魔族だったのかも知れない。

 しかし、我々の誰よりも永く同じ時間を過ごし、親代わりでもあり、教師で友人でライバルでチームメイトで戦友。 全員の肩書きを合わせても足りない物を一人で持ち、次に転生した時に、あの人に知識と経験を伝える役回り。

 辛い人生では
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