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「何のつもりだっ! わしの病を治すなどっ! 一族を根絶やしにするつもりかっ!」
口上では汚い言葉を使っていても、族長にはこいつの力が分かっているらしい。 「たった一人でも、全員殺せる」と。
「心配するな、すぐに殺してやる。 だけどあんたは運がいい、この左手の持ち主が戦いたがってるからな」
そう言うと、あいつは左手から文珠を一個出した。 持ち主? また雪之丞と言う男か? その文珠にはこう書かれていた。
『壮』
それを叩き込まれると、急速に若返って行く族長。 広場を包んでいた殺気も、族長が若返る程に膨れ上がる闘気に押されて消えて行った。
「クックックッ、そうか… それほど戦いたかったか… 若い頃の、全力のわしと戦いたかったのかっ!!」
その雄叫びを聞き、殺気に包まれていたはずの広場がどっと沸いた。 若く逞しい頃の族長を見て、その子供を産んだ女達も、子孫達も喜んでいた。 たった一本の斧で戦場で名を上げ、家を起こして来た強い男を見て。
「ああ… 最期にたっぷり楽しませてやろう」
また魔族らしい笑顔で笑っているあいつ。 神通棍は出したが魔装はしない。 この程度の相手には必要無いのだろう、あの左手さえ付いていれば。
「そんな細い枝で、この戦斧を止められるものかっ! 行くぞっ、小僧っ!!」
キイイイイインッ!!
か細い神通棍と巨大な斧がぶつかり、火花を散らして行く。 一合、二合、神通棍が斧を削りながら止めているが、あの質量比はどう計算すればいい?
あれも人間の作った物では無いのだな。 隊長やあいつが持っている物は、魔神の造った魔剣。 しかし、斧の方もただの金属の塊ではない、その差を霊力だけで賄っているとすれば、大人と赤ん坊以上の差だ。
『おおっ!』
『やはり、この方で良かったのだ!』
部族の者達も喜んでいる。 この光景は… とても美しい。 族長の命の火花が散って行く… この千年、あまた戦場で戦い、ライフルや兵器に頼らず、自らの魔力障壁と魔力の篭った斧だけで、敵の障壁を砕いて来た姿が見えるようだ。
「はははははっ! このわしの全力の打ち込みを、生身で受け止めたのは、これで3人目だっ!」
「後は親か兄弟か? 古いな」
「そうだ、わしの父親は老いる前に、腰の剣であの世に送ってやった。 この戦斧は父から奪った物だ、さあ、この戦斧が欲しければ、わしを倒して奪って行けっ!」
「遺品の相談は後にしろ」
神通棍を鞭にして、族長を吹き飛ばしたあいつ。 霊力が格段に上がったから、何かするつもりだろうが、お前の一撃でこの広場は消える、気を付けろよ。
「やっぱりあんたは運がいい、この左手の奴に気に入られた。 あの世に行って死に別れた戦友に語ってやるといい、「俺は魔神
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