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その日はいつかやって来る
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、思い残す事が何も無かった事を示すように、一片の肉塊も残さず、大地に消えて行った。

「良い戦いだった。 今度逢う時も敵となって、思う存分戦いたい」

 それは倒された戦士にとって、最高の誉め言葉。 ウィンドウに現れた雪之丞が言っていた言葉にも似ているが、これらの作法とは、過去に現れたこいつが決めた… いや、こいつが与えて来た死を、真似た儀式なのかも知れない。

 平和なこの時代、病死する者も多い中、このような戦いに恵まれ、その相手が魔神である事など通常有りえない。 私も死ぬ時はかく有りたいものだ。 今となっては叶わぬ願いだが。

「有難う御座いました、父も本懐を遂げ、さぞや満足している事でしょう。 これより一族郎党、全て魔神様の手足となり、最後の一兵となろうとも戦い抜きましょう」

 また案内役が膝を着いて語りかけて来た、こいつも族長の息子か。

「あんたが後継者か? じゃあ、これを持っててくれ、俺には大きすぎるけど、あんたなら使えるだろ?」

 族長の巨大な斧を軽々と持ち上げて、何度か振って見るあいつ。 その振りなら使えないはずは無いだろうが、パピリオの時と同じだ。 金では決して買えない宝斧を、簡単に手放して部下に与えてしまった。 物欲が無いと言うか、何と言うか。

「ははーーっ」

 その姿勢のまま頭を下げ、恭しく折れた両手を出して斧を受け取る男。 この男も部族も、これで裏切りはしないだろう、そして文字通り、命じられれば、最後の一兵まで戦うに違いない。 人心掌握の方法としては満点をつけても良い。

「鎧も大きすぎるな、これも預っててくれ。 でも、年寄りの遺言は聞いておこうか。 霊力が尽きたら今は丸腰だから、この剣と胸当てを借りておこう、別の「戦利品」が入ったら返す」
「はっ」

 これも作法の通りだ、何か一つは戦利品として取って行かないと、相手の持ち物の価値も認めなかった事になり、非礼に当たる。 あの左手のように、相手の体の一部と交換し、身に付けるのが最高の賛辞だが。

「では葬儀を始めようっ、お客人をお迎えし、料理と酒をっ!」

 そこからは祭りになった。 湿っぽい葬儀では無く、本懐を遂げた族長を祝い、歌い、踊る宴となった。
 美しい戦いを見た後だったので、私も年甲斐も無く請われるままに歌ってしまった。 族長の奮戦を称え、あいつの強さにも勝るとも劣らない戦功と雄姿、そして幸運が永遠に部族と共にあるようにと、戦士の魂をヴァルハラへと迎える、戦乙女の名を持つ者として歌った。

「わ〜、凄い上手〜いっ! ねえ、神無も歌ったら? 下手すぎて受けるかもよ?」
「うるさいっ、私は剣を振るえるからそれでいいのだ。 何なら、お前を相手に剣舞でも披露してやろうか?」

 剣の柄に手を掛けて、いつものよう
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