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その日はいつかやって来る
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を本気にさせて、魔装甲までさせた」ってなっ!」

 そう言って、また雪之丞と同じように魔装して行くあいつ。 広場を包み込む程の巨大な力で、子供は泣き、年寄りは命を削られて行く。 これでは殉死せずとも、族長と運命を共にする者も多いだろう。

「それが… それが魔神の力か… 一度戦ってみたかったぞ…… 死ぬまでに一度なっ!」

 体を震わせ、夢遊病者のように向かって行く族長。 こいつもこうする事が望みだったのか、ならば雪之丞と同じだ。 勝てはしまいが、死の床で朽ち果てて行くより余程良い。

「うおおおおっ!! 受けて見ろっ! これがわしの力だっ!!」
「来い」

 両手を下げたまま、微動だにしないあいつ。 そこに何度も激しく斧を打ち込む族長。 受け流した霊力の刃は観客に向かって行くが、障壁で止められている。 あいつは… 自分の張った障壁の中で戦っている。

「ダアアッ! ガアアアッ! ウオオオッ!!」
「そうか、楽しいか、楽しいのかっ、ははははっ!」

 そろそろ族長の命の火が消えて行く。 周りの者もそれが分かったのだろう、立ち上がって何かを祈るように見守っている。

「これで最後だああっ!!」
 ギイイイイインッ!!

 文珠の効果が消え、族長が死ぬ寸前、全ての力を込めた斧が振り下ろされた…

「良い攻撃だった」

 あいつはそれを、左腕一本で受け止め、右手の指で急所を貫いていた。

「グホッ!」
「動くな、動けば死ぬ。 最後に話したい者がいれば呼べ」
「分かった…」

 障壁が消え、戦いの気が引いて行く広場、そこに側近や遺族が呼ばれ、族長の遺言が語られた。

「今後… 部族はこの方に従う、反対の者は?」

 当然いない。 これだけの戦いを見せられて、心を動かされなかった者がいるだろうか? これは一方的な屠殺では無く、立派な戦いだった。 族長は最後の戦いで魔神と渡り合い、見事その命を奪われたのだ。

「では魔神よ… この部族の全てと、わしの武具を受け取ってくれ。 その年では知るまいが、どんな戦場でも、必ず霊力が尽きる時が来る。 その時、わしの魂は貴方を守ってみせよう」
「ああ」

 あいつには必要無い贈り物で、サイズも違い過ぎるが、作り直す事もできるだろう。 これからの戦場に連れて行ってやると良い。

「魔界に来て、俺を傷付けたのはあんたが初めてだ。 魔神と戦って左腕に傷を付けて来た、戦友への土産話には丁度いいだろう」
「そうか、最期に素晴らしい戦いが出来た。 それに貴方のような方に部族を任せ、思い残す事無く消える事が出来る… 感謝… す……」

 族長の命が尽きると、突き刺していた魔装の指を消し、ゆっくりと横たえてやるあいつ。 そうだ、それも作法の通りだ。 やがて族長は
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