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その日はいつかやって来る
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堀を越えて行く。 パピリオの攻撃で待ち伏せしていた奴らも負傷したのか、不意打ちも無かった。 そこで城塞に入ると、案内役が振り返って、仰々しく挨拶を始めた。

「ようこそおいで下さいました、魔神ヨコシマ殿。 我らの族長がお待ちです、城塞の広場を闘技場としましたので、どうぞこちらへ」
「ああ」

 歓声に迎えられると、この部族の女子供まで広場を囲んでいた。 部族の長の最期を見届けるために、全員集まったのだろう。 数千人いるが、初日からこれだけの人数を恭順させる事が出来ればしめた物だ。

「あいつか?」
「そうだ。 衰えたとは言え、これだけの部族を起こした奴だ、油断はするな」

 広場の中央に、屈強「だった」長が立っていた。 ずんぐりした竜のような体で、背丈は二回りは大きく、腕の太さもあいつの胴体より太い。 まあ、死にかけの相手に、何の心配も無いだろうが。

「はっ! やっと来たかと思えば、まさかお前のような骨と皮だけの小僧とはなっ! そんな力でわしに挑もうとは、片腹痛いはっ! ゴフッ、ゲホッ!」

 言葉通り、片腹が痛いのか、少し叫んだだけで腹を押さえて血を吐く族長、もう永くない。

「ここは作法通り、無様な姿を見せないうちに止めを刺してやれ、いいな」
「ああ…」

 私達から離れ、広場の中央に歩いて行くあいつ。 私達は来客の席に案内されたが、あいつが無作法をした時の人質でもある。 余計な事はするなよ。

「死にたいのはあんたか?」
「フンッ! お前のような虫けらに倒されるわしでは無いっ、ゴフッ、この… 数万の血を吸って来た、戦斧を怖れぬのなら… かかって… 来いっ」

 もう口上も言えないほど衰えている、立っているのがやっと、と言う所か。 早く止めを刺してやれ。

「傷よ… 治れ」
「おおっ!」

 今、何をした? 文珠も使わず言葉だけで族長の傷を治した。 あいつの言葉は現実になる、それは神と同等、既に魔神の力を取り戻しているのか?

 いや、それよりもあいつは、敵の傷を治し、情けをかけ、この部族を侮辱した。 こいつらもそんな事のために、わざわざお前を呼んだのでは無いっ! 死を与えるために呼ばれたのだ。

『何と…』
『殺せっ! 客人も全員だっ!』

 広場の空気が殺気立って来た。 これでお前は、この部族全員を敵に回した。 お前に、ここにいる全員を殺せるか? 女子供まで一人残らず… 私達が生きて帰るには、もうそれしか方法が無い。

「何のつもりだっ! わしの病を治すなどっ! 一族を根絶やしにするつもりかっ!」

 口上では汚い言葉を使っていても、族長にはこいつの力が分かっているらしい。 「たった一人でも、全員殺せる」と。
 しかし、私とジークは命を落とすかも知れない、もうすぐ後ろ
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