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「神無、おふくろと隊長が来ても手出しはするなよ」
「何故だ」
「これは雪之丞の遺言だからな、「もっと強い奴と血ヘドを吐くまで殴りあって、勝ってから死にたかった」って言ってた」
「どうしてそこまでしてやるっ、一度生き返らせてやったのに、暴れてお前の脇腹に傷を付けた男だろっ?」
遺言か… そう言えば昔聞いた事がある、魂を取れなかった間抜けな魔族の童話を。 その男は誰の願いも叶えられず、誰の魂も取れなかったが、いつまでも契約書を捨てずにいた。
「あいつは目の前にいた俺と戦いたかっただけだ。 あの頃の俺って結構強かったからな」
やがて数百年が経って力を付け、ようやく願いを叶える事が出来るようになった男は、全ての契約を果たして行ったとされている。 既にその者達は死んで、魂は取れなかったと言うのに。
「嘘だっ、どうしても倒せずに、最後まで「やめろっ」って言ってたじゃないか。 あの後、お前に食事させるのに何日かかった? 腹に残った傷は絶対治療させなかっただろっ」
それからさらに数百年、男の元に恩義を感じた者達が転生して来たと言う。 怪力無双の豪傑、鎧武者、人形使いの博士、知略に長けた女達。 星の如く集まって来る家臣によって、ついに男は一国一城の主となり、大きな力を得たとされている。
「まあな、でも男の約束ってやつだ。 今日は記念に一本抜くから、それで勘弁してくれ」
この話は契約の大切さと、無力な者でも努力次第で成功できると思わせる、単なる作り話だと思っていた。 だがこれは、過去に魔界に現れた、こいつの実話だったのかも知れない。
これは偶然なのだろうか? 正式には通達されていないが、私の任務はこいつを魔界に連れて行き、混迷を極めるアシュタロスが支配していた地域を安定させ、中央に帰属させる事だ。 話の通りなら、こいつの夢は叶うだろう。
「では、何のために私に力を与えたっ? ただ見ているだけなのかっ、相手が二人なら私も共にっ」
「昔、俺達は合体してアシュタロスと戦った、だから隊長も必ずそうする、おふくろのオリジナルは文珠も出せるからな」
「わ、分かった…」
あいつが一瞬消えると、神無を後ろから抱いて首筋を撫でていた。 いくら油断していたとしても、これは「いつでも殺せる」と言う意味だ。 神無はこいつの力に納得したらしい。
「いやっ! お義母様とは戦わないでっ! もしヨコシマに何かあったら、私… 私っ」
「心配するなよ、おふくろも隊長も、俺は殺せないように出来てるから」
嘘だ、同じ顔と言葉を持ったダミーを、ああも簡単に破壊できる奴だ。 グレートマザーはお前を殺せる、初めからそのために作ったのだろう。
『警告、降下艇接近』
やがて隊長とグレートマ
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