第23話<損傷と静寂>
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しかし腕の痛みは良いのかな? 私は、ふと疑問をぶつけてみたくなった。
「なあ、夕立……」
「ぽ?」
自分の応急手当が終わったら急に、いつもの夕立スタイルに戻ってる。相変わらず瞳が大きいな。
「お前たち艦娘が戦闘中に被弾とかすると身体は、どうなるんだ?」
「……」
私は寛代を見下ろした。
「今みたいに血が流れたりするのは、よく見るが」
そういえば寛代は胸を撃たれたはずなのに、あまり流血していない。呼吸も安定してきたようだ。
私は顔を上げて続けた。
「艦娘ってのは多少、直撃弾を受けたとしても人間のように直ぐ、やられるわけではないのか?」
夕立は少し驚いたような顔をした。それから急に、こっちを指差して嬉しそうに笑う。
「わぁ、司令って何も知らないっぽい」
「悪かったな」
私も本気では怒っていない。こういう状況だと、夕立の屈託の無い笑顔はホッとするから。
「うーんと」
やっと考える仕草をする。
「……やっぱり、分からないっぽい」
彼女は舌を出して笑った。
「分からないって……おい! お前自身が体験していることなんだぞ!」
怒るというより脱力した。
「ダメ?」
「いや……良い」
もう、これ以上質問する気力も失せた。天然少女には敵わない。
だが夕立の台詞に私はふと、あの深海棲艦の言葉を思い出していた。
『ワカラナイナ』
「分からない……か」
私は、その台詞を反復した。艦娘という存在自体、現在の人間にも説明できていない。
そもそも、この戦争だって分からない事だらけだ。駆逐艦である夕立が、そんなに詳しいことを知らなくても当然だろう。
抱っこしている寛代をみて私は秘書艦を連想した。
「やっぱり彼女に聞かないとダメなんだろうな」
「ぽい?」
夕立が首を傾げる。
「いや、こっちのことだ」
伸びている深海棲艦は、まだ動かないが……なんとなく寛代と同じように息はしている気配だ。
敵とはいえ連中もやっぱり艦娘と同じような身体なんだろうか? 捕虜として連れ帰れば、いろいろ分かるかもしれない。
別に陸軍とは違うから拷問とか人体実験するわけではない。ただ、ちょっと後ろめたい気分にもなる。
「ヒマっぽい」
夕立も空を見上げて、ため息をついている。
そのとき遠くから何かのエンジン音……
「軍用車の走行音だな」
私が言うと彼女も応える。
「あれは、日向?」
ちょっと胸騒ぎがした。
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