暁 〜小説投稿サイト〜
ハルケギニアの電気工事
プロローグ:いつもの朝?
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 私の名前は板東太郎|(ばんどうたろう)。関東地方を流れる某大河の別名だが、特に関連はないと思う。
 年は46才、男。ごく普通の会社で課長を務め、妻も子供もいる。
 私の勤める会社は、設備のメンテナンスや電気工事等の仕事を受け持っている普通の会社であるが、社長の方針がなぜか社員の想像の斜め上を行くようで、受け持ち範囲外の仕事が飛び込んできては社員を混乱させている。
 社長のポリシーはどんな仕事を依頼されても『NO』と言わない事で、出来るか出来ないかなんてことは引き受けてから考えればいいと思っているらしい。
 何をしたいのかわからない変な会社である。
 
 真冬のある日、私はいつもの通り午前3時15分に起床した。長年この時間に起きているので万一にとセットしている目覚まし時計より早く目が覚めてしまう。
 すぐに着替えると一人で朝食の準備をする。毎朝インスタントラーメンを野菜やベーコンなどと一緒に煮込み、前日の残りご飯をぶち込んで食べる。
 起きてから朝食を終えるまでの時間は概ね30分。朝食後、休む間もなく自家用車で仕事場に出かけた。

 私の仕事場は家から車で1時間かかる、それなりに有名な大きな工場群の一角にある。
 中古のプレハブ2階建ての現場事務所で、女子社員に言わせれば夜一人で残業していると幽霊が出るそうだ。あいにく私は見た事がない。

 この日はいつにもまして猛烈な寒さで、ようやく吹雪のやんだ夜空には凍てつくような星が瞬き、道路は黒光りする完全なアイスバーンだった。

「天気は良いんだが、恐ろしく滑りやすくて神経が疲れるな。」

 などと呟きながら何とか仕事場まで着く事ができたが、相変わらずあたりは真っ暗だった。

「我ながら、何でこんな時間に仕事に来ているのか、理解に苦しむな。」

 仕事場には誰もいない。当然である。現在時刻は午前4時半。普通の人はまだ寝ている時間だ。
 単に通勤時の混雑がいやなだけだが、阿呆かと言われても言い返せない。
 同僚や、部下には事務処理の必要な書類が多すぎて、早出をして処理していると言い訳しているが。まあ、文句を言っていても仕方ないので、部屋中の電灯を点け暖房のスイッチも入れて、部屋を暖める事にした。ついでに電気ポットの水を替えてお湯を沸かし始める。

 外壁にはろくな断熱材も入っていない中古のプレハブ事務所は、火の気が無くなるとすぐに冷えてしまう。
 昨日みんなが帰ってから一晩たった今は室温が3度位しかない。
 それでも暖房のスイッチを入れて10分もすると、室温も10度を超えたのでさっそくパソコンのスイッチを入れていった。
 自分の業務に関連するパソコン関係の電源を入れ、立ち上げが完了する頃にはポットのお湯も沸騰するので、まずコーヒーを入れる。
 さあ、書類の整理
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