第22話<潜伏と青空>
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は、まだ痛むであろう腕を押さえながら見送った。
しばらくすると軍用車のエンジンが起動する音、そして、ゆっくりと移動して行く車の走行音が聞こえてきた。
夕立は直ぐに寛代の傍に戻ってきた。
「司令、寛代ちゃんの様子は?」
声をかけられて思った。そういえば駆逐艦というか艦娘そのものを抱っこするのは初めての経験だな。最初から寛代の体温は低かった。
「私の直感では……」
人間ならヤバい状況だが不思議とそういう感覚はなかった。寛代は、かすかに息をしているし、まだ大丈夫そうな印象だった。
「多分、大丈夫だと思うぞ」
「うん、司令が言うなら、それでOKっぽい」
夕立は微笑む。
「そんなものか?」
「そうっぽい」
そもそも艦娘が負傷って、いったい、どういう状況なのか? 実は、まったく分からない。
いつも艦娘の戦闘は無線機越しに聞くばかりだからな。
艦娘のダメージレベルとか、そういう知識も兵学校では教えてくれなかった。いや、人類には、そういう情報が無いのだろう。
だが目の前で艦娘が撃たれる状況は海軍でも滅多に無いことだろう。
夕立もまた寛代の手を握る。
「うーん……確かに、大丈夫っぽい」
いきなり、前向きな分析だ。
「それは直観か?」
「うん」
微笑む夕立を見て私は日向や夕立には「生きて帰れ」と命令したことを思い出した。だが寛代には何も言わなかったな。
この子とは、いろいろ縁があるのだが身近過ぎてだろう。ろくに励ますことも無かった……それは反省すべきかも知れない。
だが、このまま待っていても私たちが不利な状況は変わらない。
恐らく敵の地上部隊は私たちの撤収部隊よりも先に、この付近に殺到する可能性は高い。
しかし負傷者がいては下手に動けない……あの、捕虜もいるし。
私は向こうにに倒れている深海棲艦を見た。
「そういえば『彼女』は、ずっと動かないな」
日向のことだから、まあ、大丈夫だろうが。ちょっと、心配だ。
「うーん……ちょっと触れないっぽい」
私に何か言われると思ったのか夕立は予防線を張る。
私は苦笑した。
「良いよ、お前が無理に確認しなくても……相手は敵だ。返り討ちにあう危険もある」
そんなことを言いながら私は上を見た。路地から見上げる青空が無性に青く、美しかった。
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