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入れ替わった男の、ダンジョン挑戦記
誕生、前代未聞の冒険者
第十話
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?何故ヨーンを帰したくない…、この者を求めているのか?次代の長たるこのリーシャが…?」

答えに窮したようなリーシャは、俯くと自身に問い掛けるように呟き始めた。

「ヨーンが傍に…悪くない。だが、ヨーンにも日常はあろう…っ!?何だ…この痛みと苛立ち…、ヨーンの隣に自分以外が立つ姿を想像するのが、こんなに不愉快など…!」

声が小さすぎて何を言っているか聞き取れないが、表情が百面相をしている。貴重な光景だろう。

「駄目だ…出来ぬ!そなたを帰すなど出来ぬ!」
「アレェ!?アレェェ!?」
「我が心を揺さぶる、そなたは責任を取らねばならぬ!」
「僕何にもしてないよ!本当だよ!」

まるでリーシャを弄んだような発言に、必死に潔白を主張する。冗談じゃない、僕は帰るぞ!

是も非も無く通路に突入すると、リーシャも追ってきた。おい!エルフ達はいいのか!?

「あの者達には父が居る、そなたも是非父に紹介しよう!」
「今度でいいってば!」

ホット・ペッパーでグリーヴを点火、一気に通路を駆け抜ける。森では被害が怖かったので使えなかったが、石造りの通路以降なら問題ない。

「…って、はっや!エルフ超速い!僕もかっ飛ばしてるのに!」
「狩人として名高い我が一族でも、最優と称えられたこのリーシャを甘く見られては困る!」

エルフも広く定義すれば亜人に属しはするが、もう少し大人しい印象があった。エルフ元気すぎ。

通路を通り、下ってきた階段を昇り、見知ったダンジョンの中を飛び回る。それでも振り切れない。

「楽しいな、ヨーン!時にはこんな『遊び』も良い!」
「僕は楽しくないよ!」

出鱈目にフェイントを入れながら猛スピードでダンジョンを昇っているが、気分が高まりすぎたか、リーシャはいつの間にか手に槍を携えていた。

空気を貫く音と共に、質実剛健な拵えの槍が僕の周りを掠めていく。物凄く怖い。本気で動けなくする気満々である。

逃げるだけではどうしようもないと、僕はホット・ペッパーを構えた。

「戦士の気概も良し。ヨーンよ、このリーシャの槍を捌ききれるか?」
「やるさ、この炎で!」

意を決してリーシャとぶつかり合おうとした瞬間、リーシャが『糸』に絡め捕られていた。

「糸…蜘蛛さん!?復活していたのか!?」

リーシャを捕獲したのは、以前食べられていたスカルスパイダー。ボスモンスターは一定の期間で再度出現するので、現れてもなんの不思議もない。問題は生態である。

スカルスパイダーは産卵期に獲物に卵を産み付けるのだが、産み付けかたが、その、卑猥だったりする。Rが18なコンテンツだ。そして獲物は女性を好むので、冒険者の女性からはすこぶる嫌われている。糸が高級品なので、高額で取引されはするのだが。

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