黒衣を狙いし紅の剣製 00
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研究をするだと?
私よりも優れた頭脳を持ちながらくだらないことのためにそれを使う。
ふざけるな!
才ある者はそれを使う義務がある。それを放棄するとは貴様はろくでなしだ。
そのように心の中で罵った。そうしなければ目の前の天才に心が砕かれそうだったからだ。
その日を境に私はあの男と顔を合わせなかった。あの男が亡くなった際も葬式には顔を出さなかった。あいつの顔はたとえ写真でも二度と見たくなかったからだ。
いや……ここでだけ本当の胸の内を語ろう。
あいつが死んで私は嬉しかった。これで私以上の頭脳を持つ者はいない。ならば私の時代が訪れる。今まで私が輝く日はなかったが、これからは私の時代が訪れるのだと。
だが……!
そう思ったのもつかの間、あの女が……あの男の妹が私の前に現れたのだ。
兄以上にズボラで研究以外のことに興味のない女。けれど頭脳は兄よりも劣っている。それが私の抱いている印象だった。
だが……だがだがだがだがだがだがだが!
結果的にはどうだ。
兄の研究していた人型デバイスの研究を引き継ぎながら他の分野でも結果を残していく。いくつもの論文や技術を世間へ発表し、兄よりも遥かに他を避け付けない勢いで天才の称号を手にした。
しかも……兄の方はまだ私のことを認識していたというのにあの女は私に対して何の興味も抱いていない。興味があるのは研究のみ。
他に興味が抱いていたことがあるとするならば、それは兄達が残した幼い子供の事だけ。
あの女こそ真の天才。他人などに興味はなく自分が思うがままに進み続ける。それで結果を残し続ける者を天才と呼ばずに何と言う!
あぁそうさ……私はどう足掻いても天才にはなれない。
どれだけ努力しようと秀才としか呼ばれない。
あの兄妹……ナイトルナの血筋には勝てないのだ。それが我がナハトモーント家の宿命。血筋で全て決まるとは思っていないが、少なくとも技術者としては勝ち目がない。
そう心の底から理解させられた私は、それからこれといった目的もなくただ生きていくだけの日々を送っていた。あの日……テレビに映るナイトルナ家の息子を見るまでは。
最初こそ誰だか分からなかったが、あの男に似ている気がした。あの男の連れの要素もあったものの気になった私は徹底的にその男を調べ上げた。
そしたらどうだ。思った通りあの男の息子ではないか。
技術者として大成功を収めているナイトルナ家が魔導士としても成功を収める?
ふざけるな……ふざけるなふざけるなふざけるな!
天は二物を与えないものだろう。
それがどうしてナイトルナ家だけ。私はこれまで血の涙を流すほどの努力をし、それでもナイトルナ家には敵わなかったというのに。
ナイトルナ家は私に恨みでもあるの
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