黒衣を狙いし紅の剣製 00
[1/5]
前書き [1]次 最後 [2]次話
私は秀才だ。
家の中では最も頭脳明晰である。両親や先祖と比べても私ほどの者はそうはいないだろう。その証拠に私は昔から科学者として活躍してきた。
だが……私は断じて天才ではない。
周囲は私のことを天才だと言うだろう。
だがそんなものはその者達が私よりも能力が劣っているからに過ぎない。真に天才と呼べる者は、周囲が比べることすらしないほどの高みに存在するのだから。
そんな天才を私はふたり知っている。
そのひとりは故人だ。
この人物は私の親戚に当たり、自分の興味があること以外はダメな典型的な科学者のような男だった。あらゆるジャンルで比べれば私の方が勝っている。
だが幼い頃からあの男が興味を持ったことで勝てたことは一度としてない。
大人になってもそれは変わらなかった。どうしてもその男に勝ちたかった私は、デバイスマイスターの道に進んだ。あの男よりも優れた物を作り、勝利を味わうために。
だが……開発に関わるようになってからも注目を浴びるのはあの男ばかり。
あの男に……あいつに私は勝てなかった。私がどんなに優れたものを作ろうともあいつがその上を作り上げる。周囲から評価をもらったとしてもそんなものは一時的なものであり、結局はあいつが全てを持って行った。
あいつはまさしく天才だ。
あいつが居たからこそデバイスの性能は格段に良くなり、それに伴って故障などによる事故も減って結果的に魔導士の負傷率も下がった。
今の時代、数多くのデバイスが作られている。その根幹を作ったのはあの男だ。
しかし……もうあいつはいない。
亡くなったのは確か今から20年ほど前になる。
私の記憶が間違いでなければ、あいつが亡くなった時にあいつの妻も亡くなった。残された子供はあいつの妹が引き取ったと聞いている。
『なあグリード、君はデバイスに何を求める?』
一度あの男にそう問われたことがある。それに対する私の答えはこうだ。
『何をだと? そんなもの決まっている。デバイスに必要なのは情報処理や耐久性といった使い手を支える性能だ。それはストレージやインテリジェント、アームドに置いても変わらん』
デバイスが優れているならば魔導士はより真価を発揮できる。それは私だけでなく多くのデバイスマイスターが考えている正論だ。
だがあいつは違った。
最初こそより良い性能を持ったデバイスを作ろうとしていたが、徐々に情報処理や耐久性ではなく《人間らしさ》を求めるようになった。
確かにデバイスに搭載されるAIの知能レベルが上がればマスターとの意思疎通もしやすくなるだろう。
しかし、知能レベルが上がれば上がるほどマスターとは異なる考えを持つようにもなる。マスターに対して従順な性格なら問題ない。だが反発す
前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ