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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十一話 威
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ァレンシュタインだった。用兵家としてのヴァレンシュタインの姿は何処にもなかった。
帰り間際、ある女性下士官の机の上に有った写真が俺の足を止めた。何人かの女性下士官と一緒にケーキを食べるヴァレンシュタインの写真だ。楽しそうな、暖かい笑顔を見せている。女性下士官は俺に気付いたのだろう、無言で写真を伏せた。
他でも同じように写真を伏せる女性下士官が何人か居る。リューネブルクも気付いただろう、本当なら叱責すべきなのかもしれない。だが俺達は顔を見合わせると何も気付かなかったかのように歩きだした……。彼女達の知っているヴァレンシュタインは俺の知りたいヴァレンシュタインじゃない、今の彼は昔の彼に非ず……。
宇宙暦 794年 12月 30日 ハイネセン 宇宙艦隊総司部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
宇宙艦隊の総司令部に有る食堂で一人食事をしていると目の前にトレイを持った男が立っている。
「此処、良いか」
駄目と言っても座るだろう。時刻は二時近い、この時間になれば食堂はガラガラだ。目の前の男は食欲旺盛な男だ、この時間まで食事をしていないのは不自然だ。この時間に俺が食事をするのを確認してから来たのだろう。そして空席の目立つ食堂でわざわざ俺の前に来た。
「どうぞ、ワイドボーン准将」
ワイドボーンは席に座るとハンバーグ定食を食べ始めた。ちなみに俺はロールキャベツ定食を食べている。此処の料理は味は今一つだが量が多い。俺は小食だから量よりも味を良くして欲しいといつも思う。今もロールキャベツを少し持て余している。
「昨日、シトレ元帥と会った」
「……」
「例のオフレッサーの件を話したよ」
ワイドボーンがハンバーグを食べながら話す。視線をこちらに向けないのは故意か、それとも偶然か……。
「考え込んでいたな、お前の考えを聞いてこいと言われた。次の同盟の司令長官は誰にすべきか」
「……」
「上層部では次の司令長官にビュコック提督を考えているらしい。総参謀長にグリーンヒル大将だ」
今度はパンを食べ始めた。お前、味わって食べているか? どう見ても俺にはそうは見えないが……。
「考え直す余地はあるという事ですか?」
「まだ公になっていないからな」
「……貴官はどう思うんです。ビュコック提督で良いと思っていますか?」
ワイドボーンが口をナプキンで拭った。コーヒーを一口飲むと俺を見た。こいつ、初めて俺と視線を合わせたな。
「今の同盟ではベストの選択だろう。ビュコック提督は将兵の人望が厚いし、グリーンヒル大将も極めて堅実な人だ。ロボス元帥の失敗の後任としては最適だし上手く行くと思う」
「本気でそう思っているんだとしたら、貴方は馬鹿だ。私の言ったことをまるで理解していない」
「……随分な言い方だな
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